研究課題
基盤研究(B)
今年度は当初の研究計画に沿って、①MOCVDによるGaAs結晶中に窒素(N)不純物のδドープで観測されるNN_A, NN_B, NN_Fなどの等電子発光中心の起源の解明、および②MOCVDによるGaP結晶中の[Zn-O]複合中心の形成条件の探索を進めた。まず①では、N原料ガスであるジメチルヒドラジン(DMHy)導入シーケンスと輝線発光ピークの出現との相関を調べ、NN_AおよびNN_BがNとカーボン(C)不純物の複合中心の起源を示唆するデータを得た。一方、NN_Fは比較的N濃度やCの低い場合に観測され、NN_AやNN_Bと起源が異なる可能性が高いと思われる。また、N濃度がさらに低い領域では、波長826nm付近に他機関によってX_1とラべリングされている発光も観測した。今後、実験データをN濃度やC取り込み量の観点から整理し、GaAs中のN等電子トラップの発現に関して体系的に纏める予定である。次に、上記の②に関しては年度当初に実験を試みたが、GaP中に[Zn-O]複合体と思われる等電子中心を形成するための条件は見い出せなかった。1960年代から70年代にかけてGaP中の[Zn-O]複合体による等電子中心の複数の報告があるが、いずれも液相成長によるものであり、MOCVDでの実現は困難と判断した。この研究の目的は、等電子トラップのエネルギー準位を深くすることで単一光子発生の高温動作を狙ったものであるため、今後はGaP/GaAsP:N/GaPやAlGaAs/GaAs:N/AlGaAsのような量子井戸構造による等電子準位の制御の研究に注力することにした。このほか、GaAs:Nをフォトニック結晶のL3欠陥中に置き共振器モードとの結合を図るための各種準備を開始した。具体的にはフォトニック結晶の設計、電子ビームリソグラフィとRIEによる微細加工のプロセス条件出し、犠牲層となるAlGaAs成長条件の検討である。今年度はこれらの各要素技術を集約し、第一次試作まで完了した。キャビティとの結合の光学評価など、具体的な研究は次年度に開始する。
2: おおむね順調に進展している
H25年度の研究は次年度以降の要素技術開発の位置づけであり、後年度の研究を遂行するための基礎データが得られたため。
等電子トラップによる単一光子発生の高温動作化については、GaP/GaAsP:N/GaPやAlGaAs/GaAs:N/AlGaAsのような量子井戸構造による等電子準位の制御の研究に注力する。また、GaAs:NについてL3欠陥を有したフォトニック結晶の共振器モードとの結合を図る研究を進め、パーセル効果の実証を目指す。
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