研究課題
研究計画に沿って、(1) 量子井戸構造を用いたGaAs中のN等電子準位の制御、および(2)フォトニック結晶共振器によるGaAs中のN等電子準位のパーセル効果に関する研究を進めた。(1)では、量子井戸の中央にN不純物をδドープしたAlGaAs/GaAs:N/AlGaAs構造を作製し、マクロPLを使って等電子トラップからの輝線的なNN_A発光(841nm)のGaAs井戸幅依存性を調べた。GaAs井戸幅を200nm~5nmの範囲で変えたところ、井戸幅が200nm~100nmの場合にはNN_Aからの発光が観測されたが、100nm以下では観察されなくなった。従来よりAlGaAsバリア層無しのGaAs:NサンプルでNN_Aの低エネルギー側(846nm付近)に強度の弱いブロードな発光を確認していたが、今回作製したGaAs井戸幅100nm以下のサンプルではNN_Aに代わってこのブロードな発光が主となり、かつ井戸幅の減少に伴って量子閉じ込め効果によるエネルギーシフトが観察された。NN_Aが空間局在した等電子トラップからの発光であるのに対し、上記のブロードな発光はGaAsN混晶バンドに関与している可能性がある。(2)では、昨年度末に作製したフォトニック結晶共振器について、L3欠陥部からの顕微PL測定を行った。この結果、NN_A濃度を比較的高く設定したサンプルで、フォトニック結晶に共鳴したと思われるNN_Aからの強いPL発光の観測に成功した。発光スペクトルの形状はローレンツ型であり、理論どおり極めて強く直線偏光していることも確認した。また、PL発光の自己強度相関を測定したところ、g(2)(t=0)=0.75程度のアンチバンチングを観測した。これらの結果はL3欠陥部に数個程度のNN_Aが存在する可能性を示唆しているものの、当初の目標としていた単一光子のパーセル効果による増強の端緒をつかんだ。
2: おおむね順調に進展している
GaAs:N等電子トラップをドープしたL3欠陥型フォトニック結晶共振器のPL評価を進め、共振器モードに共鳴した強い自然放出光の観測に成功するなど、最終年度に向けて期待できる研究成果が得られているため
AlGaAs/GaAs:N/AlGaAs量子井戸構造による等電子トラップの制御については、PL励起スペクトル測定を行うなどして、窒素等電子トラップのエネルギー準位の解明を行うとともに、高温動作の可能性についても調べる。フォトニック結晶共振器によるGaAs:N等電子トラップのパーセル効果の研究については、NN_Aドープ量の最適化を図ったサンプルについても詳しい評価を進め、単一のNN_Aに対するパーセル効果の実証を目指す。また、新たに窒素等電子トラップの共鳴励起発光の研究に着手し、DBR挿入による光取り出し効率の向上等を行って、コヒーレントな単一光子の発生を目指す。
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