研究課題/領域番号 |
25289093
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
東脇 正高 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所, 統括 兼 センター長 (70358927)
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研究分担者 |
尾沼 猛儀 東京工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (10375420)
本田 徹 工学院大学, 工学部, 教授 (20251671)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | MBE / 酸化物 / 窒化物 / 半導体物性 / 先端機能デバイス |
研究実績の概要 |
H26年度、窒化物半導体上に酸化物を形成する酸化物/窒化物ヘテロ構造の研究開発においては、H25年度に基本的な分子線エピタキシー (MBE) 成長条件を確立したAlOx/AlN/GaNヘテロ構造の高品質化のため、成長条件最適化に注力した。主に、縦方向のリーク電流低減を目標に取り組んだが、大幅な改善は得られなかった。しかしながら、AlOxの成長温度をパラメーターとして、AlN表面準位およびピニングレベルをコントロール可能であることはその電気的特性から確認された。また本構造に関しては、フォトルミネッセンス (PL) および時間分解PL測定から光学的評価を合わせて行った。その発光スペクトルおよび発光寿命の解析から、AlOx構造により表面準位を制御可能であることが示唆された。 上述の構造とは逆に酸化物半導体上に窒化物を形成する窒化物/酸化物ヘテロ構造に関しては、Ga2O3 (-201)基板上のAlN薄膜のMBE成長に取り組んだ。AlN成長前に窒素プラズマ照射により、Ga2O3基板表面の窒化処理を行う場合と行わない場合を比較した。AlN膜厚は5 nm、成長温度は700℃である。結果、基板表面窒化処理を施した場合の方が、AlNの表面平坦性が格段に向上することが分かった。 更に、単結晶Ga2O3の基礎物性に関する研究についても、上述2課題と平行して行っている。H26年度は、単結晶Ga2O3基板の透過および反射スペクトルから、そのエネルギーバンド構造を解析した。結果、Ga2O3は、理論的予測と違わず、正確には間接半導体であることが初めて実験的に確認され、そのバンドギャップ値は4.43 eVと見積もられた。ただし、直接遷移バンドギャップとのエネルギー差は50 meV程度と非常に小さい。また、Ga2O3は非常に複雑な価電子帯構造を有することも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
窒化物半導体上に酸化物を形成する酸化物/窒化物ヘテロ構造の研究開発においては、AlOx/AlN/GaNヘテロ構造の高品質化のためMBE成長条件最適化に予定より時間がかかっており、進捗が予定より少し遅れている。 一方、酸化物半導体上に窒化物を形成する窒化物/酸化物ヘテロ構造に関しては、概ね予定通り順調に研究開発が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
窒化物半導体上に酸化物を形成する酸化物/窒化物ヘテロ構造の研究開発においては、AlOx/AlN/GaNヘテロ構造の高品質化のため、MBE成長条件最適化に予定より時間がかかっている。また、成長条件最適化によるリーク電流の低減は未だ果たせていない。そのためH27年度は、界面制御とリーク電流低減は、それぞれMBEおよびALD膜を用いて役割を各々分けた構造の作製、評価を試す予定である。 酸化物半導体上に窒化物を形成する窒化物/酸化物ヘテロ構造に関しては、概ね予定通り順調に研究開発が進んでいるため、まずはAlN/Ga2O3界面に二次元電子ガスが形成されているかを確認する。その上で、MBE成長条件の最適化、デバイス試作・特性評価へと進めていく。また、Ga2O3基礎物性評価に関しては、これまで同様に構造、電気的、光学特性評価を組み合わせて行っていく。特に、Ga2O3中のドナーの振る舞いについての理解を深めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度の主要な購入物品であるマニュアルプローバーステーションの購入価格が、入札の結果予定よりも安価であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者(尾沼猛儀准教授)が、H27年度東京高専から工学院大に異動する。そのため今年度研究を遅滞なく進めるためには、必要な物品を購入し、光学特性評価設備を急ぎ再構築する必要がある。H26年度未使用額の多くは、本目的に使用する。
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