研究課題
H27年度、窒化物半導体上に酸化物を形成する酸化物/窒化物ヘテロ構造の研究開発においては、H26年度に作製したAlOx/AlN/GaNヘテロ構造のバンドアライメントを、角度分解X線光電子分光法 (AR-XPS) により評価した。結果、精度の高いバンドダイアグラムを描くために必要な物性情報が得られ、AR-XPSは酸化物/窒化物ヘテロ接合のバンドアライメント調査においても強力なツールと成り得ることが分かった。単結晶Ga2O3の基礎物性に関する研究においては、H27年度幾つかの重要な物性を解明することが出来た。まず、β-Ga2O3単結晶基板の透過と反射スペクトルの偏光依存性測定から、吸収端付近のバンド構造を詳細に調査した結果、直接遷移の吸収端エネルギーは、E//cで4.48 eV、E//a*で4.57 eV、E//bで4.70 eVであった (a=[100], b=[010], c=[001])。また、H26年度の実験結果、解析から示唆されていた直接、間接遷移バンドギャップエネルギー値に関しても、H27年度更に詳細な検討を行った結果それぞれ4.48 eV, 4.43 eVであることを確認した。これまでβ-Ga2O3のバンドギャップエネルギーとして様々な値 (4.4~5.0 eV) が報告されてきた理由は、β-Ga2O3特有の光学的異方性が影響していたと考えられる。更に、β-Ga2O3結晶の(010)面における偏光反射スペクトルの温度依存性から光学的異方性について詳細に調査した。スペクトルに現れる励起子共鳴構造には、励起子-LOフォノン相互作用が大きく関与することが新たに分かった。また、反射スペクトルのブロードニングパラメーターから導出した、150 K以上におけるLO フォノンのエネルギー値は75 meVであった。
4: 遅れている
H27年度、窒化物半導体上に酸化物、および酸化物半導体上に窒化物を成膜するための、分子線エピタキシー (MBE) 装置の成長室の真空ポンプ、およびクヌードセンセルの電源が相次いで故障した。そのため、当初予定していた酸化物/窒化物、窒化物/酸化物両ヘテロ構造の成膜実験がほとんど行えなかったため、当初計画からの進捗の遅れが生じている。
H27年度のMBE装置不調に伴い、酸化物/窒化物、窒化物/酸化物両ヘテロ構造に関する研究進捗が大幅に遅れている。そのため、1年間延長してH28年度これらのやり残した課題に取り組む。延長する期間は1年と限られているため、Ga2O3基板上にAlN成膜するAlN/Ga2O3ヘテロ構造の作製およびその物性評価に特に注力する。具体的には、MBE成長条件の最適化を行い、作製したヘテロ構造の構造、光学、電気的特性評価の後に、簡単なデバイス試作、特性評価までを行う予定である。
H27年度は、MBE装置故障のために、ほとんど成膜実験が行えなかった。そのため、成膜実験に必要な消耗品、成果発表のための旅費等の支出が、当初の予想よりも大幅に少なかった。
研究進捗遅れにより1年間延長することにしたため、H28年度実験遂行に必要な消耗品購入、および得られた成果発表のための旅費等に使用する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Applied Physics Letters
巻: 108 ページ: 101904-1~5
10.1063/1.4943175
Physical Review B
巻: 93 ページ: 125209-1~18
10.1103/PhysRevB.93.125209
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 28 ページ: 224005-1~5
10.1088/0953-8984/28/22/224005
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 54 ページ: 112601-1~5
10.7567/JJAP.54.112601
http://www2.nict.go.jp/green/index.html