研究概要 |
本年度は,まず測定デバイスを作製し,電気インピーダンスによる直接測定からナノ流路内のイオン分布と輸送現象を評価した。デバイスは,当初計画の通り,4大学コンソーシアム(東大,東工大,早稲田大,慶応大)で共同運用しているMEMS加工装置群を利用して作製した。電気インピーダンス測定に関しては,研究が予定よりも大幅に進み,H26年度とH27年度に実施予定であった,様々なイオン種を用いた測定と,「流れがある」状態での測定にも踏み込み,約2年の研究前倒しで予想以上に順調に進んでいる。 具体的には,過去の研究例が多く,参照データが豊富なKCl溶液をサンプル溶液として用い,KCl濃度を1nM~1Mの範囲で変化させつつ,電極ギャップ(流路幅)がそれぞれ数10nm~1μmのナノ流路で電気インピーダンスを測定した(測定周波数はDC~10MHz)。さらに,同様の実験を流れがある状態でも実施し,流れの有無がナノ流路内のイオン分布に与える影響も調べた。その結果,静的な状態におけるイオン濃度が電気二重層の厚さに与える影響を明らかとした上で,かつ,流れがあると連続的にキャリアイオンが供給されるため,長期連続的な測定が可能となること,及び「流れが無い」状態に対して電気二重層の厚さが薄くなるという結果を得ることが出来た。再現性・定量性の面で確認が必要であるのでH26年度も追試を行うが,基本的にはH25年度だけでなく,H26年度に実施予定していた実験まで達成した。 一方,H27年度に実施予定であった,イオン半径や水和半径の影響に関しては,KCl,NaCl,LiCl,MgCl2,AlCl3などのイオン半径や水和半径,および価数の異なる様々なイオンを網羅的に測定し,水和半径や価数が電気二重層の厚みに与える影響,およびナノ流路内の導電率や誘電率に与える影響を網羅的に評価し,その基礎現象を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H25年度は,「流れが無い」静止状態の測定を計画していたが,H26年度に実施予定であった「流れがある状態」の測定にまで踏み込み,流れの影響まで測定することが出来た。まだ,メカニズムの解明にまで至ってないが,流れがある場合特有の現象が計測されている。とH27年度に実施予定であった,様々なイオン種を用いた測定と,「流れがある」状態での測定にも踏み込む,約2年の研究前倒しで予想以上に順調に進んでいる。 さらにH27年度に実施予定であった,様々なイオン種を用いたイオン半径や水和半径の影響の評価も実施した。KCl,NaCl,LiCl,MgCl2,AlCl3)と,イオン半径や水和半径,および価数の異なる様々なイオンを網羅的に測定し,水和半径や価数が電気二重層の厚みに与える影響,およびナノ流路内の導電率や誘電率に与える影響を網羅的に評価し,その基礎現象を明らかとすることにも成功した。現在,分析化学分野のトップジャーナルであるAnalytical Chemistryに投稿中である。
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