液晶光配向技術を用いた偏光干渉法による多次元フォトニック素子を創成するために、我々が開発してきた光架橋性高分子液晶を用いた捩れ配向を含む2次元の回折格子素子を作成してきた。我々の光配向技術の特徴は、強固な配向規制力が得られるだけでなく、露光量によって直交光配向と平行光配向を制御出来ることにある。このことを利用すると、ガラスセルの両内面への露光量に差を付けることによって、一度露光で露光面内だけでなく液晶セル内の捩れ配向分布を形成できる。このことは、他の光配向技術の片側づつ偏光露光し、高精度に位置合わせして捩れ配向構造を含む構造を形成しなければならない技術と比較すると、その優位性は明らかである。 本申請に関わる研究の最終年度では、これらの様々な高度光配向技術を生かし、3光束および4光束の偏光干渉露光を実施し、3次元空間に液晶分子の配向分布を形成した異方性フォトニック素子を形成することに成功した。これらのフォトニック素子は、回折の偏光依存性、偏光変換回折、多彩な波長依存性、など従来の等方性のフォトニック素子には無いユニークな性能を示した。 以上の研究成果により、直線偏光方位角によって回折したりしなかったりする1~3次元回折素子、直線偏光を円偏光に変換しながら回折する1~3次元回折素子、青色レーザーは回折するが赤色レーザーは回折しない1~3次元フォトニック回折素子、など多彩な回折素子を形成出来る事が総合的に実証され、回折格子素子の新しい研究分野・応用分野の開拓がなされたものと考えられる。
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