研究課題/領域番号 |
25289105
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
浅野 種正 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (50126306)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザープロセッシング / レーザードーピング / 炭化シリコン / ドーピング / パワーデバイス / 電力用半導体素子 |
研究実績の概要 |
本年度は新たに,(1)液体窒素中に浸した4H-SiCにフッ化クリプトンエキシマレーザを照射することによりn型不純物である窒素のドーピング,および(2)4H-SiC表面に堆積したアルミニウム薄膜への照射によるp型不純物であるアルミニウムのドーピングについて調査した. ・液体窒素中でのレーザ照射により,窒素がドーピングされ,n型層を形成できること,ならびに良好な特性をもつpn接合ダイオードを形成できることがわかった. ・窒素は,表面から深さ1ミクロン付近まで分布していること,その分布形状は,SiC表面の一部がアブレーションで消失しての熱拡散理論によって得られる分布とよく一致した.窒素の分布から得た拡散係数の値は,これまでに報告されている熱拡散実験より得た値およびそれをSiCの昇華温度まで外挿して得られる値よりもはるかに大きいことがわかった.この結果は,昨年度にリンについて得たものと同じである.また,リンと窒素の拡散係数の比については,従来の熱処理による熱核酸係数の比と同様であることがわかった. ・元素組成の分析の結果,ドーピングした後にはSiCの構成元素である炭素が,表面から消失しているがわかった.窒素は,SiC結晶内で主に炭素の位置を占めることがわかっていることから,窒素の高速拡散は,SiC中の炭素が外向拡散し,炭素空孔を窒素が置き換えながら拡散するためであるとの仮説が立てられる. ・アルミニウム薄膜への照射では,薄膜の厚みを適切な範囲にすることで,表面をほぼ平坦に保ったままアルミニウムをドーピングできることがわかった.そのドーピング深さは,昨年度に見出した塩化アルミニウム水溶液中での照射に比べて10倍以上の深さとなることがわかった.電気特性の評価の結果,アルミニウムの電気活性化率が小さいが,良好なpn接合ダイオードを形成できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ドーピング機構の解明に向けて有効な知見を得ることができたこと,新しいドーピング手法を考案できたこと,論文2報と国際会議3件の発表を行えたことに加え,3件の特許出願をすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
新しく考案したドーピング手法の発展も含め,概ね当初の計画に沿って研究を進める計画である.
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