本年度は,昨年度の研究で発見した現象である,4H-SiC上に堆積したアルミニウム薄膜へのレーザー照射によるアルミニウムのドーピング現象を中心に,(1)ドーピング特性の調査,(2)大気中照射および水中照射での発光現象の解析,(3)コンタクト抵抗に評価,(4)デバイスの試作を行った.用いたレーザーは,フッ化クリプトンエキシマレーザである. ・アルミニウム薄膜の厚さには最適値が存在し,その厚さは約250nmであることがわかった.最適な厚さは,高温の溶融アルミニウムがSiC表面に存在する条件として決定されること理解される. ・発光特性を解析した結果,大気中照射では表面近傍にプラズマ密度が1CC当たり約10の16乗,電子温度2.1エレクトロンボルトの高密度・高温のアルミニウムガスプラズマが生成されることがわかった.一方,水中で照射するとプラズマ発光を検出できなかった.これらの結果から,ドーピングは,生成したプラズマを介して固体に付与されたエネルギーによってSiC表面が加熱され,熱拡散過程で行われると理解できる.ただし,電気炉加熱によって得られる範囲での温度域について報告されている拡散定数よりもはるかに大きな拡散定数をもつ現象については,今後さらに詳細な調査が望まれる. ・伝送線路モデル(TLM)法によるオーミック接触の接触抵抗評価を行った結果,本ドーピング法を用いることによって10のマイナス5乗オーム平方センチ台の接触抵抗を,特殊な金属間化合物を形成しなくとも実現できることがわかり,素子作製に応用できるオーミック接触を形成できることを示した. ・酸化シリコン薄膜をマスクに用いた選択ドーピングが可能であることを見出し,その手法を用いて接合障壁型ダイオード(JBS)を試作した結果,期待通りの特性が得られ,デバイス応用が可能であることがわかった.
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