研究課題/領域番号 |
25289108
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
WANG Huabing 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (70421427)
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研究分担者 |
羽多野 毅 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (50354337)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テラヘルツ光 / 固有ジョセフソン効果 / メタマテリアル / 分子指紋スペクトラム / テラヘルツ画像診断 |
研究概要 |
高温超伝導体固有ジョセフソン接合テラヘルツ光源をメタマテリアル・フォトニック結晶実験に用いるべく、放射光線幅の狭線幅化に成功した。固有ジョセフソン接合の高バイアス条件で生成するHOT-SPOTにより、接合列の結合が強まり、コヒーレンスが向上することで、これまで報告されてきた線幅数百MHzが、発振周波数の10-5に相当する5MHzを達成した。この様な単色の光源がえられたことで、今後のメタマテリアル・フォトニック結晶実験の精度向上が見込まれる。この単色化を反映して、ジョセフソン接合を用いたShapiroステップの観測に成功した。さらに、もう一桁の向上が得られれば、通信技術・分光技術にとっても有用なツールとなる。 このテラヘルツ光源を画像診断実験・スペクトロスコピー実験・メタマテリアル特性評価実験に効率的に適用するため、一つの装置に光源・被評価試料・検出器の三つの機能を搭載したクライオスタットを昨年度の当該科研費で自作した。今後の実用試験が楽しみである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(a)Bi2212単結晶の浮遊帯移動法による合成では、大型高品質の単結晶の合成に成功した。Y添加についてもウイスカー結晶の合成を試みた。 (b)Bi2212単結晶の精密制御では、雰囲気制御電気炉での精密なアニールを実施し、より最適ドープ条件に近い結晶で、(c)THzキャビティ加工技術の高度化と合わせて、1.0THzを超える発振を初めて観測した。 (d)THz放射強度(周波数)と接合平面内定在波励起モードの同時観測は、光源・被測定試料・検出器を組み込んだ装置で実現に道筋をつけた。 (e)数理モデルによる大規模数値計算では、HOTSPOT存在条件での発振即製の解析を行った。 (f)準光学系設計・アンテナ工学(電磁界解析)を適用した、放射強度の増大・指向性向上・偏光性向上の検討では、様々な条件でのシミュレーションを開始した。
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今後の研究の推進方策 |
(a)THz発振の周波数同期・位相同期では、数百~数千の接合列を位相整合させる駆動力はhot spot生成による分流回路の形成にその端緒をなす。従って、hot spot生成の詳細を電流-電圧特性の変化による温度評価・温度直接測定・電熱シミュレーションにより明らかにする。その理解の上で、固有ジョセフソン接合列の駆動電源を位相同期ループで制御することで、線幅を発振周波数に対して10-6以下にすることを試みる。コヒーレンスの向上は、強度の増大にもつながる。 (b)THz帯SIS受信機の開発では、固有ジョセフソン接合を狭線幅のTHz帯ローカル発振器として用い、これを高温超伝導体を用いたTHz帯SIS接合やHEBと組み合わせることで、THz帯のSIS接合ミクサ・HEBヘテロダイン受信機を構成し、従来の金属系超伝導体を用いた素子では適用できない、THz超の帯域の観測を可能とする。 (c)メタマテリアル技術との融合では、超伝導体のパターンに磁界印加による遮蔽電流を流す、または磁束量子配列を制御して、メタマテリアル機能を設計し、固有ジョセフソンTHz発振器を用いてその特性を評価する。この超伝導体を用いる手法の利点は、磁界強度を変えることで、同じパターンでも連続的にメタマテリアル特性制御できることにある。 (d)生体分子・危険物・禁止薬物などの高分解能“指紋スペクトラム”の測定を行い、狭線幅・周波数可変光源の応用用途を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月の旅費が確定していなかったため 物品費として使用する
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