研究課題/領域番号 |
25289109
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
品田 賢宏 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (30329099)
|
研究分担者 |
谷井 孝至 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339708)
井上 耕治 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50344718)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 決定論的ドーピング / ドーパント規則配列 / シリコン量子物性 / ダイヤモンド量子物性 / 3次元アトムプローブ |
研究実績の概要 |
本研究では、10nm以下の領域へのドーピングを実現し、次世代デバイスに適応可能な決定論的ドーピング法の確立を第1の目的とし、単一ドーパントデバイスの量子物性制御を第2の目的としている。単一ドーパントの3次元規則配列が最終目標である。H27年度は、以下の研究項目に取り組んだ。 研究項目1「10nm以下の領域への単一ドーパントドーピングプロセスモジュールの開発」:10nm領域への単一ドーパント導入プロセスを開発し、注入された単一ドーパントを可視化するために、3次元アトムプローブによる評価を行った。測定の針試料作製方法や測定条件の検討を行い、局所的に注入されたイオンの検出に初めて成功した。シミュレーションによる結果と比較し、イオン注入分布が正しく検出されたことを確認した。 研究項目2「単一ドーパントシリコンデバイス量子輸送」:単一ドーパントが作る量子準位に基づくSi中の量子的電子輸送特性解析のため、チャネル中に比較的深い不純物準位を形成するGeを注入し、低温から室温までの電気伝導特性評価を行った。注入されたGeによる複合欠陥が再現され、チャネル中に1次元的にGeを配置することで不純物バンドが形成し、チャネル長100 nmでは室温下で不純物バンドを介した電子輸送を観測した。 研究項目3「単一ドーパントシリコン-空孔ダイヤモンド量子発光」:電子線リソグラフィを用いて、ダイヤモンド上のレジストマスクに直径 約10 nm の ナノホール配列形成に成功した。マスクを介して低エネルギー窒素イオン注入を行うことによって、NV-センタの位置と個数 をおおよそ制御して作製可能となった。表面バックグラウンドは低く、作製したNV-の電荷が安定であることを確認した。コヒーレンス時間は~3.1 μsであり、光検出磁気共鳴による評価では、1スポットに3個のNV-センタ が形成されたことを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単一イオン注入を用いた決定論的ドーピング法によって、個数と位置が制御されたドーパント原子がシリコン、及びダイヤモンドに導入され、たまたま発現するのではなく、量子物性制御が可能となり、電子デバイス、量子情報への応用展開が可能となったため。
|
今後の研究の推進方策 |
研究項目1「10nm以下の領域への単一ドーパントドーピングプロセスモジュールの開発」 イオン注入されている領域をアトムプローブ測定用針状試料の針先先端に持ってくる作業がネックとなっている。アトムプローブで測定可能な領域とイオン注入で予想される領域は同程度であるため、両者の位置が一致しないと全体像を取得できない。そのため、井桁パターンのサイズを小さくすることで、イオン注入されている領域を従来よりも限定させる。さらに、集束イオンビームによる針先先端領域にイオン注入領域を入れる精度を向上させ、注入イオンの空間分布の全体像を取得する。 研究項目2「単一ドーパントシリコンデバイス量子輸送」 量子輸送について、複合欠陥準位を占める電子数に関する理論的考察を進めると共に、単一ドーパントデバイスの高温動作化へむけたデバイス設計を更に進める。 研究項目3「単一ドーパントシリコン-空孔ダイヤモンド量子発光」 全スポットの探索を継続して実施し、収率を評価すると共に、追成長によるコヒーレンス時間向上の可能性も実験的に調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
情報収集を目的とした国際会議の参加を見合わせたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
単一ドーパントが作る量子準位に基づく電気的、及び光学的量子現象の検証を更に進めるべく、サンプル作製費に充てる予定である。
|