研究実績の概要 |
本研究課題は、確率的手法の視点から、現代符号理論の深化, ならびにその学際分野への展開}を目標とするものである。確率的手法(probablistic method)は、符号理論, 情報理論, アルゴリズム解析, ランダムグラフ理論などの分野において重要な証明技法となっている。現代符号理論において培われた疎グラフに基づく基づく重み分布解析における理論的知見と確率的手法の融合に基づき, 本研究課題では、(1) 統計力学的手法に基づくLDPC/LDGM符号の理論の深化、 (2)疎グラフに基づく観測系における推定理論の構築、(3) 疎なランダムグラフの理論への貢献と応用を目指して研究を実施した。本年度は、最終年度であるので、研究計画全体の総括として本報告を行う。 (1)統計力学的手法に基づくLDGM符号の解析の研究の進展として、非線形疎グラフ観測系における理論的展開が挙げられる。統計力学的手法を用いることで非線形符号の重み分布の解析が可能となった(本成果については、国際会議に投稿中)。従来解析が困難であった雑音のある状況下でのグループテストの解析が可能となるなど今後のさらなる研究の進展が期待される。 (2)疎グラフ観測系における推定理論の構築においては、母関数的手法に基づくグループテストの性能解析手法の確立が挙げられる。解析の結果、従来グループテスト研究の分野で、それほど重視されていなかった疎レギュラー観測行列(グラフ)が検出性能の点で優れていることが明らかとなった。この結果は、国際論文誌に投稿中であり、すでに同論文(arxiv版)を引用して同様の観測行列を利用する他グループの研究も登場しつつある。 (3)疎なランダムグラフでの理論展開として、ネットワーク信頼度の問題、カット重み分布の母関数的手法を用いた解析などで研究成果を得ている。
|