研究課題/領域番号 |
25289115
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
原 晋介 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80228618)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 情報通信工学 / 位置推定 / 無人飛行体 / 圧縮センシング / GPS / 到来時間 / 到来時間差 / 受信信号電力 |
研究実績の概要 |
通常の位置推定法が使えない環境での位置推定の実現について,複数の無人飛行体(UAV; Unmanned Aerial Vehicle)を建物外部にまず飛行させ,それらの位置をGPSで推定し,その推定位置を使って,建物内部に存在するターゲットの位置を推定するという階層型位置推定法を提案してきた.到来時間(TOA; Time Of Arrival)と到来時間差(TDOA; Time Difference Of Arrival)を使った方法に関しては,位置推定誤差の分散について摂動法を用いて理論解析し,要求精度を満足するためのUAVの台数等を明らかにするとともに,精度を支配するパラメータを明確にした.そして,その理論解析結果を基にして,位置推定精度を改善する方法を提案した.解析方法は,理論解析と計算機シミュレーションによるものであった. 一方,受信信号電力(RSSI; Received Signal Strength Indication)を使った方法に関しては,建物内の壁等の構造により決定される減衰マップを,建物外部で飛行しているUAV間で無線信号を送受信することによるワイヤレストモグラフィを使って推定し,その減衰マップの情報を基に,ターゲットの位置を推定するというワイヤレストモグラフィを用いた減衰マップ推定/位置推定法を提案した.この方法の大きな特徴は,減衰マップ推定とターゲットの位置推定を,一つの最適化問題で定式化するところにある.UAV間でやりとりする無線信号の送受信回数と送受信場所数を減少させるために,最適化問題に圧縮センシングの理論を応用しているところが新しい試みである.解析方法は,計算機シミュレーションと,電波暗室での原理確認実験によるものであった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TAOとTDOAを用いた方法に関しては,位置推定精度限界を理論で評価でき,推定精度を向上させる方法を提案できている.理論と計算機シミュレーションにより位置推定精度は評価できたが,実験によっては評価できなかった.その理由は,多くの部品や無線通信モジュールを購入して,TOAによる測距を試みたが,現状のモジュールを改造することなく測距に使うと,その精度が悪いからである. 一方,RSSIを用いた方法では,2次元のワイヤレストモグラフィに基づいた減衰マップ推定/位置推定法を提案し,その位置推定精度を計算機シミュレーションで評価できた.さらに,電波暗室での原理確認実験でそれが可能であることを確認できている. UAV機体に関しては,搭載重量が大きく,かつ飛行時間が長いものがまだ販売されていない.私が想定している実験に使えるものがなかなか見当たらないのが現状である.
|
今後の研究の推進方策 |
TAOとTDOAを用いた方法に関しては,UAVの台数をなるべく少なくし,それらの移動によるコストまで考慮に入れ,高い位置推定精度を効率良く達成できるUAVの飛行フォーメーションとスケジューリングを研究する予定である.さらに,移動時には,それまでのターゲットの推定位置を考慮に入れ,次のUAVの位置を決定するような,適応的な位置推定も提案するつもりである.これら2つに関する研究はまだ見たことがない. TOAによる方法の位置推定精度を実験により確認するために,無線モジュールの選定をファームウェアの改造の可否を検討しながら進める. RSSIを用いた方法に関しては,3次元ワイヤレストモグラフィに拡張し,計算機シミュレーションによりその推定精度を検討する.減衰マップ推定とターゲット位置推定を交互に行いながら,両方の精度を上げて行く繰り返し推定法について研究を進める.できることならば,3次元ワイヤレストモグラフィを使う方法に対しても電波暗室での原理確認と推定精度確認実験を行いたいと思っている. 最終的には,UAV実機を用いた実験を行おうと思っているが,可能搭載重量が大きく,飛行時間が長い機体がないのが現状である.この分野の開発は著しいので,そのうちに販売されることを期待している.
|
次年度使用額が生じた理由 |
複数台の無人飛行体(UAV; Unmanned Aerial Vehicle)実機を購入し,実験による位置推定の評価を行う計画であったが,実機の選定を年度末まで行っていたが,実験での使用に耐えうるUAVが見当たらず購入できなかった.100万円以下で購入できるUAVは,搭載重量が小さく(1 kg以下)で飛行時間が短い(15分程度).この性能であると,私が計画している実験が満足に行えない. また,UAVに搭載予定の無線モジュールをいくつか購入し,それらの測距性能を評価したが,満足いく測距結果が得られなかった.無線モジュールのファームウェアの改造を行わない場合,満足いく測距性能が得られないことが最終的にわかった.
|
次年度使用額の使用計画 |
UAVの開発は現在盛んであるので,実験での使用に耐える機体の販売を期待したい.性能を若干犠牲にしても平成27年度にはUAVを購入し,実験による位置推定評価実験を行う予定にしている.従って,繰越金の一部はUAV実機の購入にあてる予定である. また,購入できる無線モジュールでもファームウェアを変更すれば,測距できる方法を提案できた.従って,繰越金の一部は無線モジュールのファームウェア変更費用にあてる予定である.
|