研究課題/領域番号 |
25289119
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
菊池 弘昭 岩手大学, 工学部, 准教授 (30344617)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁界センサ / 磁区構造 / 応力腐食割れ / 強磁性 |
研究概要 |
本年度は、単純磁区モデルを用いてインピーダンスの不連続が発生する磁界強度について定性的な説明を行い、また、素子端部における反磁界の影響を検討するための素子を試作し、外部磁界と素子インピーダンスとの関係について検討した。さらに応用先の一つとして検討しているインコネル600合金における強磁性化の基礎的な振る舞いについて検討を行った。以下にその成果をまとめる。 1. 容易軸の角度を変えた素子を作製し、系統的にそのインピーダンス特性について測定した。インピーダンスが最大をとる磁界強度は容易軸角度の増加とともに弱磁場側に推移し、容易軸角度90度では磁界ゼロで最大を示すようになる。この振る舞いはバイアス磁化率の理論により説明できる。 2. 印加磁界の分解能を高くすると、容易軸40-50度付近から不連続のインピーダンス特性を示す。その定性的な振る舞いを単純磁区モデルを用いて説明できることを明らかにした。また、不連続の要因としては、磁化のスイッチングによるもので、各々磁区によって、スイッチングする磁界強度の違いから、不連続点が2箇所存在することを説明できた。さらに、単純磁区モデルにより磁区構造変化の様子の見積もりが可能となった。 3. 素子の端部における反磁界分布がインピーダンスの不連続特性やインピーダンスの急峻な変化を劣化させることを実験的に明らかにした。高感度センサや不連続特性を積極的に利用するデバイスの設計において重要な項目である。 4. インコネル600合金においては粒径を変化させた試料を用いて、熱処理温度を変えて強磁性化の熱処理時間依存性について検討した。粒径の2乗に反比例して飽和磁化が減少することを明らかにした。保磁力の変化は粒径依存性を示さず、結晶粒方向の違いにより形成される強磁性相の方位等が変化することで強磁性相の磁化過程が影響を受けることが要因として考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度に実施を計画していた不連続特性を有するGMI素子の動作原理解明と動作モデル構築については定量的な振る舞いを設計可能にするための一部項目を除いては達成できている。また、素子端部の形状や異方性角度を変化させることでインピーダンス不連続発生の有無及び不連続点の推移を制御可能であることを明らかにして、反磁界の分布を考慮した高感度化や不連続特性の利用上重要な知見を明らかにできているため。インコネルやステンレスの磁気特性評価も当初計画通りおおむね進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
以下の予定で研究を推進する。 1.動作モデルの妥当性の検討・モデルに基づく高感度・超小型磁界センサを設計試作:25年度で一部完了していないインピーダンスの定量的見積もりを可能にするようモデルを検討し、そのモデルの妥当性について検証する。モデルと実測値との比較を行い、結果をモデルにフィードバックさせてより精度の高いものを実現し、設計シミュレータを開発する。設計シミュレータでは材料パラメータ(異方性磁界、飽和磁化、導電率等)や寸法形状を入力することでインピーダンス変化の挙動が予測可能なものにする。開発した設計シミュレータにより、高感度・小型素子の設計を行い、試作し、その特性評価を行う。 2. 高感度センサ実現のための回路設計:磁界センサの高感度化のためには磁界の変化に敏感に反応するパラメータの変化割合を大きくすることがひとつの重要な要素であるが、回路のノイズレベル低減も重要なポイントとなる。そのための回路設計を行う。 3.インコネル・ステンレスの磁気特性変化挙動:炭素濃度や粒径を変化させたインコネル・ステンレスの磁気特性変化挙動について検討を継続するとともに、それらと磁気計測で評価するパラメータとの定量的な対応モデルを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
薄膜製造装置については当初予算より低価格で確保できたため。 薄膜製造装置の導入に付随して、クリーン環境や基板洗浄のための設備等、実験環境の整備が必要である。薄膜装置の真空系の改善も行う予定である。次年度使用額と翌年度請求した額をこれらに充てる。
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