研究課題/領域番号 |
25289122
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
齊藤 保典 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40135166)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 計測機器 / ライダー / 蛍光分光 / 環境計測 |
研究実績の概要 |
研究目標「バイオエアロゾルの遠隔実時間計測が可能な車載型蛍光分光ライダー装置の開発」のもと、平成26年度は「車載型蛍光分光ライダー装置」の完成を目指した。 ①車両:装置搭載車両を、利便性・入手性を考慮して、バンタイプの小型軽自動車に設定した。市販車の荷室内に搭載可能な大きさ(容量約2.0m3)を考慮し装置製作を行う事とした。 ②装置製作:①の条件を満足することを目標とした結果、蛍光分光ライダー装置は1725 mm (L) x 1240 mm (W) x 1200 mm (H)のものが製作できた。小型UVパルスレーザー(波長355nm、パルスエネルギー30mJ、パルス幅6ns)を備品購入し、受信系と一体化したモノスタティック構造とした。蛍光検出器はゲート機能付きマルチチャネル検出器を、動作制御ソフトウェアは前年度にて開発された大型装置のものをカスタマイズした。装置全体は保持脚折り畳み構造の移動台に載せることで、屋内・車両間の移動・配置がスムーズに行えるようになった。フィールド観測時の電源確保のため、小型発電機を準備した。 ③動作確認試験:三次元掃引観測試験と疑似エアロゾルスペクトル観測試験を行った。前者では、植物成分であるクロロフィル分子の蛍光観測を試み、10m×5m(距離20m)の空間を水平方向10×高さ方向6分割のステップ掃引で、かつ奥行き方向空間分解能3m以下の三次元マルチ蛍光画像を得た。後者では、微粉末化されたバイオエアロゾル原因物質を封入したセルをレーザー伝搬光路上に設置し、蛍光スペクトル受信の可能性実験を試みた。アメリカシロヒトリの糞では480nm、685nm、740nm付近に、人工物の道路標識では405nm、515nm、560nm付近とそれぞれ蛍光スペクトルのピーク値の違いが検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究実施計画では「車載型蛍光分光ライダー装置の完成を目指す」であって、「車載型蛍光分光ライダー装置が完成した」が平成26年度の実績である。
バンタイプの軽自動車に搭載が可能な装置を完成したこと、動作性能についても20mあるいはそれ以上離れた距離からの蛍光信号が検出された事、三次元マルチ蛍光画像観測に成功したこと、何種類かの疑似バイオエアロゾルスペクトルの遠隔計測に成功した事、微弱蛍光信号を背景光の強い日中に取得可能にしたこと等が「完成した」の根拠である。
「車載型蛍光分光ライダー装置」の完成により、バイオエアロゾル発生と挙動に合わせた観測場所を特定しないフィールド計測が可能となった。「バイオエアロゾルの遠隔実時間計測が可能な車載型蛍光分光ライダー装置の開発」という本研究の最終目標に着実に近づいている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、①フィールド観測の実施、②蛍光スペクトルデータベースの作成、③総括を行う。 ①バイオエアロゾルとしての花粉、肥料、水中藻類などを観測対象にした、森林、畑、河川などをフィールドとした観測を実施する。具体的には長野市近辺と諏訪湖釜口水門を検討している。バンタイプの軽自動車をレンタルする。 ②フィールド観測と並行して、バイオエアロゾル原因物質の蛍光スペクトルデータベースを作成する。生活環境中に存在する原因物質を収集し冷凍粉砕により微粉末化し、本装置および蛍光分光光度計を用いてスペクトル計測を行いデータベース化を行う。①の結果と比較することで、バイオエアロゾルの種類の同定を試みる。 ③国内研究会(第33回レーザセンシングシンポジウムや応用物理学会等)や国際会議(The 27th International Laser Radar Conference, July/2015, NYC, USA;発表採択済)での発表や、学術雑誌(OSA発刊のApplied Opticsを検討中)への投稿等により、成果を広く公表することで評価を受ける。 研究期間終了後の展開として、長期的な最終目標である「生活空間内に浮遊する多種エアロゾル挙動情報の実時間計測と情報配信技術の確立」にむけた研究計画を立案する。
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