平成27年度研究課題は「フィールド観測の実施による装置性能評価と情報提供手法の提案」に置いた。 1.フィ-ルド観測1:ハードターゲットによる三次元蛍光スペクトル画像化実験を実施した。前年度までに開発製作が完成した車載型蛍光スペクトルライダーを用いて、フィールド観測を実施した。植生フィールド環境と河川フィールド環境を対象とした観測結果からは、波長445nm、685nm、740nmを中心とした、蛍光の二次元画像の距離方向への分布の蛍光三次元構造が得られた。またバイオエアロゾルの原因物質(アメリカシロヒトリの糞の微細粉末)と人工物(ロードコーンの微細粉末)の蛍光スペクトル計測では、両者の蛍光スペクトル形状に大きな差異を確認し、本ライダーで種類の判別が可能であることが明らかとなった。 2.フィールド観測2:大気エアロゾル鉛直分布観測実験を行った。接地逆転層発生時の地上付近の高濃度エアロゾルに含まれる蛍光物質の検出を試みたが、明確な結果を得ることができなかった。理由として、集光光学系と分光器との光学的結合効率の低さと回折格子とCCD検出器の組み合わせによる感度の低さが問題となった。新たに干渉フィルタと光電子像倍管からなる検出系の開発を行っている最中である。 3.蛍光データベースの開発:ライダー観測の蛍光スペクトルから物質の種類判定を行う事を目的として、エアロゾル候補物質の蛍光データベースの作成を進めた。19種類の物質を冷凍粉砕して微細化(エアロゾル化)し、ライダー光源と同じ335nm励起による蛍光スペクトルを取得した。蛍光スペクトル形状から、植物系、動物系、人工物系に分類されることが明らかとなった。 4.情報提供手法の提案:スマートフォンを利用した環境情報の実時間配信を提案した。
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