研究課題/領域番号 |
25289129
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
濱上 知樹 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (30334204)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | システム情報処理 / 機械学習 / 最適化 / System of Systems |
研究概要 |
本研究は,SoSの基盤技術の確立と,その設計理論の構築,および知能システムと融合した知的SoS(iSoS)の創生のために,4年間の期間を前半2年(フェーズ1),後半2年(フェーズ2)にわけて実施する計画を立てている。まず,(1) H25年度とH26年度の2年間を経て,SoSの要素技術と設計方法に関する体系化の研究を1ラウンド目としている。また,研究期間を通して,iSoSの基盤技術,iSoSの設計理論,iSoSの社会実装というテーマに取り組んでいる。 特にH25年度では,これまで検討を進めてきた分散知能要素技術を深化させ,SoSの要素技術として高度化するための基盤技術の理論展開をはかった。具体的には,機械学習および最適化技術等の知的要素技術について,SoSにむけた新たな進展をみた。 個々の研究要素ごとに成果を列挙すると,iSoS基盤技術として,SoSを構成するシステム同士の依存関係を自律的に学習し運用をしながら,システム全体としての「スキル」を向上させる,アンサンブル逆強化学習のアルゴリズムと,これを動作させるための進化的アプローチ,および,類似の経験からスキルを転移させる位相転移学習の方法を明らかにした。また,iSoS設計理論の構築として,認知バイアスを含む複雑な系の最適化手法を考案し,その基本的効果を明らかにした。さらに,iSoSの社会実装にむけて,救命救急システムにコンカレント機械学習のしくみをとりいれたアルゴリズムを試行し,従来精度(35%)を大きく超える判定精度(80%)を達成し,新たなSoSの事例としての基礎を確立した。 以上の研究進展は,当初予定していた2年間の基礎的検討,設計論の確立という目標に沿って順調に進展をしていると自己評価をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iSoSの高度化に必要な機械学習技術として,アンサンブル逆強化学習という新たな手法を考案しその有効性を確認できたことで,今後のiSoS研究の発展に大きく貢献した。また,レジリエンス確保のために,認知バイアスの効果を最適化理論に含めるなど,複雑なシステムの最適化に寄与する新たな取り組みを開始している。特に,救命救急システムの具体的実装を通して,iSoSに必要とされる要素技術が明らかになりつつあることで,今後の研究方針がさらに明確になった。このように当初計画に含まれていた要素技術の検討は順調に進んでおり,今後,学会等にて公開されることで,さらにiSoS研究の発展に貢献できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従い,25年度中に達成した要素技術の成果展開をはかるとともに,知的救急医療サービス,パワートリアージのプロトタイプの上でこれを評価する。 まず,知的救急医療システム(SMART-ER)の実現にむけて,過去の膨大な救急医療データとその判定,搬送実績,対応に至る大規模データベースを用い,さらに,リアルタイムの患者の状態,救急スタッフ・車両の状態,交通状態,それらの地理的・時間的分散状態の相互作用のモデル化によって,複雑な救急医療システムの高度化を実現する。そして,現在稼働している第一世代トリアージと,研究代表者が開発した機械学習によるトリアージシステムとの精度上の比較検討を行い,システム全体の評価を行う。 次に, 知的配電制御の実現にむけて,多数の分散エージェントの協調的振る舞いにより自律的な事故復旧やパワーの融通の交渉を行うしくみ(PowerTriage)を,高次機械学習を用いて実現する。電力系統中の様々な状態から,適切な振る舞いをオンラインで獲得するためには,高次の状態空間と,コンカレントに動作するエージェントの不確定性を同時に解決する必要がある。さらに,そのため実時間追従学習が必要となる。これらを総合して,パワートリアージを中心とした,レジリエンス確保,運用・規制科学(レギュラトリサイエンス)への展開をはかる。そしてiSoSによる(1)分散協調システム,(2)災害時の供給信頼度の確保,(3)分散エネルギーの価値拡大を得る。 以上の具体的アプリケーションへの展開をはかりながら,その都度ブレイクスルーが必要な要素技術についてさらなる改良をはかり, 3年目にむけての体系づくりへの足掛かりをつくる。
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次年度の研究費の使用計画 |
救命救急システムのアルゴリズム開発を優先した結果,本格実装をH26年度に変更し,必要な計算機システムの導入を見合わせたため。また,当初発表予定であった外部投稿等の掲載その他がH26年度にずれ込んだため,旅費,投稿費などを次年度使用にまわしたため。 H25計画に含まれていたシミュレーション環境の調達を,H26中旬から順次開始するとともに,成果展開に必要な投稿,旅費を執行する予定である。
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