研究課題/領域番号 |
25289129
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
濱上 知樹 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30334204)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | システム情報処理 / 機械学習 / 最適化 / System of Systems |
研究実績の概要 |
Intelligent system of systems: iSoSの実装事例となる救命救急支援システムの高度化をさらに進め,iSoSの核となる相互運用性維持のための技術的要件と性能について明らかにした。 具体的には,機械学習を用いたコールトリアージの高精度化と動的ディスパッチ運用評価用シミュレーションシステムについて大きな進歩が得られた。トリアージの高精度化のために、ランダムフォレストを基礎とする新たなアルゴリズムを提案し、運用条件を満たした状態で従来の2.5倍(80%)を超える精度が達成された。この精度のもとで、動的ディスパッチ運用を評価するために、高精度なシミュレーションシステムを開発した。さらに、家庭での簡易トリアージを行うことを想定して、救命救急データの中から優先項目を抽出する学習を行い、少ない判定項目で高い精度が得られることを明らかにした。このようにSoSの特徴である複合システムを知能システムで連携させるための具体的方法論を明らかにすることができた。 もう1つの研究事例として計画をしていたパワートリアージの研究では,新たに研究着手をした逆強化学習アルゴリズムによって,人の振る舞いから適切な行動を獲得するための学習方法を明らかにした。また,スキルベース学習と呼ぶ新たな学習パラダイムを提案し,学習が未完成の状態からでも実環境に導入させながら学習を進行する手段を明らかにした。これらの具体的研究事例の積み上げにより,iSoSの本研究期間の折り返しを前に,iSoSの基盤技術の概形を把握するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26の当初計画は,H25年度中に達成をした要素技術の成果展開と,知的救命救急医療サービス,パワートリアージのプロトタイプ作成と評価であった。このうち,知的救命救急医療サービスについては,過去の膨大な救急医療データとその判定,搬送実績,対応に至る大規模データベースを活用し,さらに,リアルタイムの患者の状態,救急スタッフ・車両の状態,交通状態,それらの地理的・時間的分散状態の相互作用のモデル化によって,複雑な救急医療システムの高度化を実現できた。また,現在稼働している第一世代トリアージと,研究代表者が開発した機械学習によるトリアージシステムとの精度上の比較検討を行うなど,当初予定されていたほぼすべての事項が達成できた。これらの成果は,新聞報道や専門雑誌の特集に掲載されるなど,波及効果がみられた。 一方で,知的配電制御については,認知バイアスを用いたアプローチを試行し,一定の成果があがったものの,目標としていた実時間追従学習の実現にはまだ至っていない。しかしながら,平行して進めていたアンサンブル逆強化学習とスキルベース学習のアプローチが基礎的検討ながら優れた性能が得られる可能性を見出している。このように,計画の一部については,若干の見直しをしながらも,研究機関の折り返し時点で明らかにすべき事項と要素技術については,ほぼ予定通りの成果に至っており,おおむね順調な進捗となっている。
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今後の研究の推進方策 |
iSoSは,成長分野にある新たなシステム工学の手法である。すでにこの2年の間に,機械学習技術も大きな進歩を遂げ,SoSとの関わりもさらに密になってきている。この成長分野に対し柔軟かつ効果的に研究を推進していくために,フェーズ2では26年度までに明らかになったSoS創生システムの効果と課題についてさらに深堀りを進め,研究計画後半にむけて,個別の研究目標を再定義する。例えば,以下のような点について留意した検討を行う。 1. 実時間性,動的環境における追従性,性能限界を明らかにする。 2. ヒトの運用の容易性,ヒューリスティスの導入をはかる。 3. 既存システムとの相互運用性に関する評価を行う。 さらに,27年後半からは,ここで明らかになった課題の解決とさらなる性能向上にむけての具体的目標を設定し,2ラウンド目の検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
パワートリアージ評価シミュレータ作成のための予算であったが,基礎アルゴリズムの方針を変えたことにより,次年度に先送りとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに新たなアルゴリズムの検討は終わっているため,早急に予定通りの使途にてシミュレータの開発にとりくむ。
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