研究課題/領域番号 |
25289130
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
浅本 晋吾 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50436333)
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研究分担者 |
蔵重 勲 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 主任研究員 (20371461)
名和 豊春 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30292056)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | セメント硬化体 / 高温負荷 / 組織変化 / 物性変化 / 混和材 |
研究概要 |
本研究では,分子レベルからマイクロメートルスケールまでのセメント硬化体の組織構造に基づき,これらの高温負荷による力学的特性,物質透過性といった物性の変化を検討し,そのメカニズムを解明することを目的としている. 本年度は,種々の高温履歴のもと,セメント硬化体の細孔構造,強度,剛性に及ぼす影響について検討を行った.普通ポルトランドセメント,高炉セメントB種,普通ポルトランドセメントを20%置換したフライアッシュセメンと異なるセメントで,セメントペーストとモルタルで小型供試体を作製した.各供試体は,打設直後に型枠の打設面を封緘し,20℃,もしくは80℃一定,さらにマスコンクリート中心部の水和発熱を模擬した仮想温度履歴の3種の温度環境に曝した.なお,打設1日後には脱型し全体を再度封緘して,材齢28日まで上記温度環境に静置したのち,水銀圧入試験,圧縮試験を行った.その結果,普通ポルトランドセメント,混合セメントを用いたセメントペースト及びモルタルに仮想のマスコンクリート中心温度を作用させた場合,材齢28日では常温養生に比べ全材料で強度は増進した.80℃一定の温度負荷をセメントペーストに作用させると,普通ポルトランドセメントを用いた場合,C-S-Hの構造変化によって常温養生に比べ強度・剛性が低下したが,スラグ,フライアッシュを用いた場合は傾向が異なり,微視的な観点からさらなる検討が必要であることが分かった.80℃一定環境にモルタルを曝すと,ペーストと骨材の線膨張係数の違い,自己乾燥などの影響から骨材界面が損傷し,空隙を粗大化させ強度が低下する傾向が見られた. 地下水に曝されるコンクリート橋脚杭で,亀甲状のひび割れがスリランカで観察され,遅延エトリンガイト(以下,DEF)による内部損傷の可能性について検討した.スリランカのセメントのX線分析をした結果,石膏の量が日本のセメントより多くDEFの発生可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり,初年度は,高温負荷を受けたセメント硬化体の組織構造の変化の検討を中心に研究を進めた.水銀圧入法による空隙分析は,数多くのケースで分析し,種々の高温負荷が与える空隙構造変化をペースト,モルタルの両面から検討できた.水蒸気・窒素吸着法,低温DSCの分析はまだ実施できていないが,これらの分析による微細組織は平成26年度に行うクリープの挙動に大きく影響すると考えられるため,クリープ実験とともに行うこととした.また,空隙構造に基づいた強度・剛性変化の分析も,混和材を用いた様々な配合で多角的に行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度で得られた組織構造の情報をもとに,初期に高温履歴を受けた高強度コンクリートの圧縮クリープ低下機構について,クリープに大きな影響を与えると考えられるゲル空隙やC-S-Hの構造変化といった微視組織の分析のもと,検討する.また,高温環境での収縮挙動についても内部水分挙動に基づき,分析する. 平成25年度のスリランカのセメントの分析結果をもとに,スリランカでのDEFの発生原因を明確化する.また,スリランカと日本の両国で,同一の条件のもと,DEFの促進実験を行い,DEFをもたらす影響要因について,異なるセメント,混和材,骨材の観点から検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
高温負荷による空隙構造分析が本研究の基幹であり,初年度はそちらを優先的に行い,当初予定していた内部相対湿度計測は,次年度の収縮,クリープ実験とともに行うことにしたため,湿度センサなどの予算を繰り越したため.また,水蒸気・窒素吸着など微細組織分析もクリープ実験とともに行うとしたため. 湿度センサ,もしくは内部水分測定装置,実験用ノートパソコン購入.水蒸気・窒素吸着分析消耗品など.
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