研究課題/領域番号 |
25289141
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
古田 均 関西大学, 総合情報学部, 教授 (70109031)
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研究分担者 |
野村 泰稔 立命館大学, 理工学部, 任期制講師 (20372667)
中津 功一朗 大阪城南女子短期大学, 現代生活学科, 常勤講師 (30454606)
山口 隆司 大阪市立大学大学院, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50283643)
高橋 亨輔 香川大学, 危機管理センター, 助教 (60647262)
広兼 道幸 関西大学, 総合情報学部, 教授 (70268332)
鶴田 浩章 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (90253484)
八木 知己 京都大学大学院, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30293905)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 橋梁構造物 / 維持管理 / クラウドコンピューティング / 実橋老朽化実験 / 維持管理統合システム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、橋梁維持管理統合システムの開発による持続可能な維持管理の実現である。近年、わが国の道路橋の老朽化が進み、維持管理の必要性が高まる中、多くの地方自治体では、熟練技術者の不足により、持続的な維持管理が困難な状況にある。このような問題を解決するために,クラウドコンピューティング技術を用いた意思決定支援を行うシステムの開発を試みる。平成25年度には既存橋梁の腐食並びにコンクリートひび割れに関する調査を行った。そして平成25年度と平成26年度で地方自治体、高速道路会社の橋梁維持管理の実態調査並びに現在導入されている管理システムの実態調査を終わり、その成果を提案システムに反映させることをほぼ完了している。特に、現実世界における様々な不確実性を考慮するための新たな手法を開発し、そのシステム化がほぼ完了した。クラウドコンピューティンング技術を用いたデータベースの構築のために、マインドマップを用いた類似事例検索について研究を進め、データベースの利用者の負担を軽減できる検索方法と結果から有効な情報を容易に見つけるための可視化を試みた。 また、平成26年度で画像処理技術を用いた損傷度解析システムの開発を行った。まだこの損傷度解析システムはプロトタイプであり、実用化にはまだいくつかの課題を残しているが、基本的なシステムの枠組みは完成している。 モニタリング技術に関する研究においては、打音診断データを用いたパターン認識による高力ボルトの軸力診断システムの開発並びにフラクタル次元解析による振動応答の1次モード形状の不連続点の抽出結果に基づいて損傷検出を行う手法の開発も試みた。最後に、平成26年度から地方自治体の橋梁管理者の技術向上を図るためのE-ラーニングシステムの開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までにクラウドコンピューティング技術を用いた意思決定支援を行うシステムの開発を試み、その基本的システムの構築はできている。平成27年度からは、平成26年度までに開発した維持管理統合システムの利用を開始し、開発システムの実用化、および統合システムとしての利便性について実証研究を行う。システムの実用化を図るためには、現実世界における様々な不確実要因に対して頑健な解が求められる.しかしながら,システムから完全な解を得ることは非常に難しく、わずかな精度向上のための計算効率の著しい低下のように実用性が損なわれる可能性がある。したがって、本研究では、不確実な環境下においても有用な解が得られる新たな維持管理計画策定法を開発した。 さらに、システムによって意思決定支援を行うとともに、意思決定を行う技術者の養成も行うことで,橋梁維持管理における課題解決を試みた。若干予定より遅れているのが、データベースの構築である。データベースの構築では、いくつかの地方自治体で用いられているデータベースと統合するシステムに必要なデータから、システムの利用に適したデータベースの枠組みを検討しているが、まだ最適な形式の選定にいたっていない。さらに、データベース内の構造の複雑化が予想されることから、データの検索やマイニング方法の開発を行っているが、まだ完成の域には達していない。 モニタリング技術に関する研究においては、打音診断データを用いたパターン認識による高力ボルトの軸力診断システムの開発並びにフラクタル次元解析による振動応答の1次モード形状の不連続点の抽出結果に基づいて損傷検出を行う手法の開発も試みた。また、簡単なE-ラーニングシステムのプロトタイプの構築を行ったが、平成27年度から高速道路会社と連携して、維持管理技術者のための実践的なE-ラーニングシステムの開発に着手する.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度から平成26年度までに開発した維持管理統合システムの実用化、および統合システムとしての利用に関する実証研究を行う。さらに、本研究では、システムによって意思決定支援を行うとともに、意思決定を行う技術者の養成も行うことを目的としているので、実用的なE-ラーニングシステムの開発を試みる。いままで簡単なE-ラーニングシステムのプロトタイプの開発をしてきたが、平成27年度から高速道路会社と連携して、維持管理技術者のための実践的なE-ラーニングシステムの開発を行う。また同時に、データベースと計画策定、技術者養成に関するシステムの実用性の検証を開始する。さらに、ヘルスモニタリングのように他のシステムとの連携の可能性についても研究を始める。模型に対する構造ヘルスモニタリングの実験的研究を実施し、得られたデータの解析によってシステムへの反映を行い、必要に応じて改良を加えることで、システムの総合的な評価と有用性の検証を行う。また、大阪府、大阪市等の地方自治体では現在道路橋は5年毎に定期点検が実施されている。よって、地方自治体へデータ提供を依頼することで、研究期間における提案システムの持続的な利用の有用性の検証も開始する。 そして、架け替えが決定した実老朽化橋梁を用いて、①荷重車による載荷実験、②起振機による振動実験の2つの実験を行い、部材劣化度と橋梁全体系の健全度に関する現状把握を行う。次に、部材損傷などのさらなる劣化の進行を想定し、部材の劣化を人工的に模擬した(部材の取り外しなど)上で、上記2種類の実験を同様に行い、橋梁の応答性状の変化を把握する。そして、これらの情報を基に、部材の劣化度と橋梁健全度の関係を把握する.また,得られた橋梁の応答性状を検証データとして、有限要素法(FEM)モデルの構築にフィードバックするとともに、FEMモデル構築の際の留意点などについて考察を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していたデータベースの作成が少し遅れているので、その分の予算を次年度に繰り越すことになった。また、UAVによる点検システムの開発とそのデータ解析を次年度も行うように計画を変更したので、その分の予算を次年度に繰り越した。そして、橋梁維持管理E-ラーニングシステムの実用化を次年度以降に本格的に行うので、その分の予算を少し厚くするために、若干の予算を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に計画していたデータベースの作成が当初計画より遅れているので、平成27年度でその予算を使用してデータベース構築を行う予定である。そして、UAVによる点検システムの開発とそのデータ解析を平成27年度に実用化を目指して行うために、平成26年度で繰り越した予算を使用する。さらに、橋梁維持管理E-ラーニングシステムの実用化を平成27年度から本格的に行うので、繰り越した予算の一部をそのために使用する予定である。
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