研究課題
十勝沖太平洋など北海道周辺海域におけるガスハイドレートの産状・生成環境や資源としてのポテンシャルを評価するために,北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」および流氷砕氷船「ガリンコⅡ」による海洋調査を行った。また,調査で採取した海底堆積物に対して,種々の物理・化学分析を行った。得られた成果をまとめると以下のようになる。1.十勝沖太平洋の調査海域(40km×15km)においてマルチビーム音響測深機および計量魚群探知機を用いて,海底地形およびガスプルームの観測を行った。その結果,海底からガスが湧出するガスプルームを約20地点確認した。また,コアリングを行った結果,炭酸塩鉱物が採取された。さらに,堆積物中のガス分析結果から海底表層において高いメタン濃度が確認された。これらのことから,十勝沖において初めて表層型ガスハイドレートが存在している可能性が高いことが確認された。2.十勝沖はハイドレートの存在下限を示すBSR深度が深いので,網走沖と比較するとガスの湧出箇所が少なく,マウンド地形や断層付近などガスが湧出する要因を持った地形でないとガスが湧出しにくくなっていると考えられた。そのため,表層型のガスハイドレートの存在は網走沖よりも少ないが,BSR深度が深いために深層型のガスハイドレートも含めた全体的な賦存量は網走沖よりも多いのではないかと推測された。3.各種試験結果より,網走沖試料では採取地点によって含水比が低い場合でも強度は低い値を示した場合もあったが,十勝沖試料では含水比が低く,強度は高い傾向を示した。また,砂分の含有量が十勝沖試料では網走沖よりも多い傾向が見られた。これらは、それぞれの海域での堆積環境が異なっていることが要因と考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
交付申請時に記載した本年度の研究実施計画をほぼ実施できている。特に,十勝沖太平洋において海洋調査を行った結果,初めて表層型ガスハイドレートの存在の可能性を明らかにし,社会に対しても広く公表された。これらのことから,「当初の計画以上に進展している。」と自己評価した。
網走沖オホーツク海においては,ガスハイドレートの存在限界水深である水深300m程度まで調査範囲を拡げ,網走沖全体での表層型ガスハイドレートの存在状況や生成環境を把握する。また,北海道立総合研究機構の協力を得て,機構が所有している北海道周辺海域での音響探査データを調査・解析し,北海道周辺海域全体でのメタン湧水の活動状況を把握する。一方,海洋調査を主体としているため,天候により十分な調査や試料採取ができなかった場合には,これまでの物理探査データの詳細な解析や,採取した試料を用いた室内実験を詳細に行い,次年度以降の研究計画に反映する。
購入予定のコアラー等の物品が他経費で購入できたため。また,紋別沖での調査に傭船料が安価な船舶を使用したため。
網走沖での調査範囲を拡大するとともに,北海道立総合研究機構が所有する北海道周辺海域での既存海洋調査データの解析を行うために使用する。また,海底堆積物の硬度が予想以上に高かったため,消耗品であるコアラービットの消耗が激しかった。その補充品にも充てる。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
地盤工学会北海道支部技術報告集
巻: 55 ページ: 121-130
巻: 55 ページ: 131-136
Proceeding of 15th Asian Regional Conference on Soil Mechanics and Geotechnical Engineering
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Geo-Marine Letters
巻: 34 ページ: 241-251
10.1007/s00367-014-0364-4
http://www-ner.office.kitami-it.ac.jp/