研究課題
1.北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」による海洋調査を実施した。調査では,マルチビーム音響測深機および計量魚群探知機による海底地形およびガスプルームの観測,コアリングによる海底堆積物の採取と採取試料に対する各種分析を行った。調査において,表層型のガスハイドレートの存在指標となる海底からガスが湧出するガスプルームを新たに60ヶ所以上発見した。これまでの調査とあわせて250カ所以上となり,網走沖はガス湧出活動が活発であり,ガスハイドレートが広範囲に賦存していることが示唆された。また,調査では原位置コーン貫入試験を行い,ハイドレート層の原位置強度の測定に成功した。堆積物中のハイドレートの存在状況にもよるが,調査地点では周辺地盤よりも6~7倍程度高い地盤強度が得られた。2.海底から湧出するガスが確認されているオホーツク海網走沖の水深100m程度の海域において,小型の遠隔操作無人探査機ROVを用いた海底湧出ガス観測調査を行った。調査によって,海底から湧出するガス画像の撮影に成功し,マルチビーム音響測深機や計量魚群探知機によって観測されるガスプルームの画像データから湧出ガス量を推定するための基礎資料が得られた。2.北海道立総合研究機構の水産試験場が所有している漁業調査船(北洋丸,北辰丸,金星丸)が過去の定期観測等で取得した計量魚群探知機による画像データの解析を行い,稚内沖,枝幸沖,紋別沖,襟裳沖,日高沖,函館沖など北海道周辺海域において数十か所でガス湧出地点が存在することが明らかにされた。
1: 当初の計画以上に進展している
交付申請時に記載した本年度の研究実施計画がほぼ実施できている。特に,網走沖の調査では原位置コーン貫入試験によって,ハイドレートを含む堆積層の原位置強度の測定に成功し,ハイドレート賦存域の安定性評価のための重要な知見が得られた。さらに,水深の浅い海域ではあるが,海底湧出ガスの撮影に成功し,湧出ガス量の推定に繋がる成果が得られた。これらのことから,「当初の計画以上に進展している。」と自己評価した。
オホーツク海網走沖には広域的にガスハイドレートが存在する可能性が高いことが分かってきた。今後は,網走沖での調査範囲をさらに広げ,広範囲でのガスハイドレートの分布状況や生成環境の解明を行う。また,広域的なメタンガス生成メカニズムを探るために,陸域における温泉ガスの採取分析も行う。海洋調査では,過去の調査でガスハイドレートが採取された地点において,遠隔操作無人探査機ROVを用いて,海底からガスが湧出している状況や海底面に露出しているハイドレートを撮影観察し,ハイドレートの賦存状況を視覚的に把握する。さらに,湧出ガス気泡を直接採取し,ガス分析を行うことによって,ハイドレートの生成メカニズムを明らかにする。網走沖を含めた北海道周辺海域全体での,ガスハイドレート調査については,北海道立総合研究機構(道総研)の協力を得て,機構が所有している既存の計量魚群探知機データの分析を継続して行う。また,道総研所有の漁業調査船による調査を行う。稚内水試所有の北洋丸による調査は,枝幸~紋別沖において実施する。釧路水試所有の北辰丸による調査は,網走沖での定期海洋観測の際に実施する。これらの調査・解析から北海道周辺海域全体でのメタン湧水の活動状況やガスハイドレートの産状を明らかにする。一方,海洋調査を研究の主体としているため,天候により十分な調査や試料採取ができなかった場合には,これまでの物理探査データの詳細な解析や既存資料の分析を詳細に行い,成果をまとめる。
網走沖での調査のための傭船料が安価な船舶の利用により縮減できたため。また,購入予定の物品や調査旅費を他経費で賄うことができたため。
調査海域を網走沖以外の北海道周辺海域に拡げ,北海道総合研究機構所有の調査船での調査費用に充てる。また,海底地盤の安定性評価のために行う模型地盤での振動台実験用具に充てる。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 9件) 備考 (1件)
地盤工学会北海道支部技術報告集
巻: 56 ページ: 85-92
巻: 56 ページ: 93-98
巻: 56 ページ: 113-118
巻: 56 ページ: 157-164
巻: 56 ページ: 349-353
Soils and Foundations
巻: 55 ページ: 329-342
10.1016/j.sandf.2015.02.009
Japanese Geotechnical Society Special Publication
巻: 2 ページ: 526-530
http://doi.org/10.3208/jgssp.JPN-031
沿岸域学会誌
巻: 28 ページ: 3-8
http://www-ner.office.kitami-it.ac.jp/