研究課題/領域番号 |
25289143
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 正太郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70346815)
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研究分担者 |
浅岡 顕 公益財団法人地震予知総合研究振興会, 地震防災調査研究部, 副首席主任研究員 (50093175)
野田 利弘 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (80262872)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 断層 / 地震波 / ひずみの局所化 / 進行性破壊 / 加速度運動 / 初期不整 / 弾性エネルギー / 脆性 |
研究実績の概要 |
本年度は、慣性力を考慮した水~土連成有限変形解析により、逆断層の破壊をひずみの局所化を伴う進行性破壊現象として再現するとともに、地震動と同様な不規則波を発生させることを試みた。地盤材料が軟化を生じうるような状況下において、地盤の側方に変位を与えることで、逆断層的な破壊が発生することを確認した。また、極めて脆性的な材料を対象にした場合には、破壊時に、ひずみの局所化領域周辺から加速度運動が発生することを確認することができた。また、非破壊領域において蓄えられた弾性エネルギーの解放が、加速度的な破壊の進行を生じさせていることを掴んだ。一方で、この解析で発生する振動は、初動で最大加速度に達し、その後指数関数的に減衰する人工地震波に見られる特徴を有していた。そこで、地盤全体の強度に僅かな不均質性を持たせたところ、自然の地震波と同様な不規則な振動を発生させることができた。同じ地盤に対し、逆向きの変位を与えた場合には正断層的な破壊が発生することや、破壊後も載荷を継続すると、同様な破壊が周期的に発生することを確認した。 上記と並行して、横ずれ断層によるリーデルせん断帯の再現も試みた。これは前年度からの継続な取組である。本年度は特に地盤底面の初期不整の与え方の影響について考察した。その結果、同じ地盤であっても、初期不整の与え方によってリーデルせん断帯の間隔や角度に違いが発生することや、初期不整の直上でリーデルせん断帯が発生することを把握することができた。 また、これらの解析によりリアリティを持たせるために、岩盤を模擬したセメント改良土の要素試験を行うとともに、その力学的特徴を表現できるよう、土骨格の構成式に改良を加えた。今後、よりリアリティな解析を行うことで、断層破壊により生じる地表の変状や地盤上の構造物に生じる影響について分析できるようになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、正断層、逆断層、横ずれ断層的な破壊をひずみの局所化を伴う進行性破壊現象として再現することに成功している。また、極めて脆性的な材料を対象にした場合には、破壊に伴い、非破壊部分において弾性的なエネルギーが解放されることが要因となって、破壊部分から加速度運動が発生することを解明している。 また、現状の計算によりリアリティを与えるために、岩盤を模擬したセメント改良土の要素試験を行い、その力学的特徴を掴むとともに、それらの特徴を再現できるよう、土骨格の構成式に改良を加えることに成功している。 上記の研究はおおむね順調に進行しているといえる。 ただし、研究期間内に最終的な目的を完遂するためには、海溝型地震に対する取り組みに早急に着手する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、第一に断層地震を模擬したシミュレーションのリアリティーを高めてゆくことを挙げる。そのために、新たに改良を加えた土骨格の弾塑性構成式の適用を図るとともに、スケール効果等についても考察を重ねる。また、表層地盤を解析対象に組み込み、断層破壊が地表にもたらす変状や、破壊によって発生した地震動が非線形な材料特性を持つ表層地盤を通してどのような揺れに変わってゆくのかということについて考察を行う。さらに、地震の周期性に関する研究を進め、断層型の地震が周期的に発生するメカニズムの解明を行う。 海溝型の地震を対象にした研究では、プレート境界での摩擦性挙動を再現可能なモデルを現在使用している解析ツールに組み込む。プレート境界での滑りにより発生する振動と、プレート境界でのすべり挙動とプレートの断層的な破壊挙動の連動により発生する振動で、どのような違いが発生するかを確認する。さらに、このような連動によって発生する津波の規模にどのような違いが生じるか考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りである。 購入予定であったものに、既存の部品が使用できたため、その分支出が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験用の消耗品の購入等に充てる。
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