研究課題/領域番号 |
25289152
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 淳 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50292884)
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研究分担者 |
鈴木 崇之 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90397084)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 東京湾 / 無酸素水塊 / 硫化物 / 環境再生 / 数値モデル / モニタリング / 底質 |
研究概要 |
平成25年度は東京湾および霞ヶ浦を対象として,貧酸素・無酸素水塊に関する調査研究を実施した.東京湾においては硫化物を含む無酸素水塊動態の把握とその変動メカニズムの解明に向けたモニタリング手法の確立を試み,データ取得を開始した.まず,硫化物の効率的な測定手法の確立を目指し,投げ込み式硫化水素センサーや投げ込み式水質計と採水による硫化物分析を組み合わせた手法について検討した.しなしながら,採用した硫化水素センサーは実海域においては不安定なところがあり,効率性と精度の両面で問題があることが明らかとなったため,次年度は別の手法について検討することが課題として残された.一方,投げ込み式水質計と採水による硫化物モニタリングは傭船による調査に加え,行政機関の定期調査時に追加的に実施する体制を整えることで,効率的なモニタリング体制を構築することができた.さらに底質採取に基づき,底質中硫化物データの蓄積を図った.次に数値モデルでは代表研究者らが開発している流動・水底質モデルの改良を進め,水柱から底質への有機物の蓄積過程とその分解過程の精緻化に取り組んでいるところである.また,地形影響の大きい局所的な過程を解析するのに有利な非構造格子数値モデルの適用に関する基礎的な検討を実施し,格子の効率的な作成法や安定的に計算を進める方法,およびスーパーコンピュータを用いた並列計算手法について,モデル開発者の協力を得ながら進めてきた. 一方,霞ヶ浦では環境浚渫の効果として貧酸素の改善が指摘されているが,モニタリングデータの解析を基に,濁度の上昇が光合成を抑制し,その結果底質への有機物供給げ抑制されたことが貧酸素の改善をもたらした可能性を指摘した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は硫化物を含む無酸素水塊のモニタリング手法の確立が目的の一つであったが,これは概ね達成できたと考えている.ただし,投げ込み式硫化水素センサーを用いた方法には問題があったため,次年度以降別の手法について検討するが,投げ込み式水質計と採水分析に基づく手法でも当初の目標を達成することは可能であると考えている.一方,数値モデルについては研究代表者らが開発してきたモデルおよび非構造格子モデルの両者について,改良ならびに効率的な適用法について検討を進めており,次年度には具体的な検討が可能になるものと予想している.さらに,霞ヶ浦で見られた顕著な貧酸素水塊の改善について検討し,その要因について一つの仮説を提示できたことは有用な成果であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はまず,平成25年度の課題となっている,センサーを用いた効率的な硫化物濃度の計測法について検討を行う.業者との打合せを実施し,使用予定のセンサーの選定については概ね終了しており,実地において検証を行う予定である.一方,投げ込み式水質計と採水分析による硫化物濃度の計測法については既に手法が確立しており,今年度から本格的なモニタリングを実施する予定である.一方,数値モデルに関しては研究代表者らが開発している流動・水底質モデルの改良を進め,硫化物を含む無酸素水塊過程の再現を目的としたプロトタイプモデルを完成させる予定である.非構造格子モデルについては流動場の再現を進め,他の鉛直方向にz座標系を採用した構造格子モデルを用いた浚渫窪地や航路といった不連続的な海底地形を有する水域における硫化物過程の再現を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた投げ込み式硫化水素センサーの性能が充分でないことが判明したことから,当該センサーに関わる支出を見合わせることとしたため. 次年度においては別の硫化水素センサーの使用を予定しており,その検討のために使用する予定である.
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