研究課題/領域番号 |
25289158
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
阪田 和哉 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50444047)
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研究分担者 |
生川 雅紀 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (30588489)
瀧本 太郎 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70403996)
中嶌 一憲 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70507699)
坂本 直樹 山形大学, 人文学部, 准教授 (80367937)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 都市・地域計画 / 救急救命活動 / 政策評価 / ウツタイン統計 |
研究実績の概要 |
本研究は、救急蘇生統計の個票データ(ウツタイン統計データ)を用いた統計解析に基づき、救急搬送時間の短縮及び市民等の応急処置等がどれだけ心肺停止傷病者の救命や社会復帰を促すかを明らかにしたうえで、救急救命活動への寄与に着目した社会資本の評価手法を提案することを目的とするものである。 平成26年度は、市民参加とインフラ整備の協働による救急救命活動を評価する手法検討のための情報を得るべく、市民による心肺蘇生(バイスタンダーCPR)に対する地域住民の支払い意思や協力意思に関してアンケート調査を実施し、データの収集、分析を進めた。また、平成25年度の成果である救命曲線の推定結果をもとに、救命率向上の便益を算定する方法を整理した。より精度の高い救命曲線の同定や、社会復帰の程度(傷病者の予後の機能カテゴリー)についての分析を進めるために、ウツタイン統計データのクリーニング作業を進めた。併せて、救命効果の便益計測に必要な救命人口一人当たりの便益原単位について、統計的生命の価値のアプローチから、従来の交通インフラ整備(交通死亡事故減少等)で活用している原単位とは異なる算定方法の検討を行った。人々のリスク回避度についての計量経済学における研究成果をもとに、救急搬送の円滑化(搬送時間短縮)による救命率向上(死亡リスクの減少)の程度に応じた統計的生命の価値を算出する方法の開発と、算定結果の妥当性の検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の成果である救命曲線の推定結果を用いた検討が進んでいること、より精緻な分析のためのデータクリーニングの方法検討と実施が進んだこと、救急救命活動として医師や救急隊以外の担い手であり、重要性の指摘が増えている市民によるバイスタンダーCPRについての意識調査を進められたことから、研究の進捗は順調である。他の検討・分析事項についても準備が進んでいる。 ただし、具体的な評価方法の提案やケーススタディの実施などには至っておらず、当初計画以上の進捗とはなっていない。
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今後の研究の推進方策 |
26年度にクリーニングを行ったデータを用いて、救命曲線についての分析を進める。救命の成否のみではなく、予後の機能カテゴリーを用いた順序ロジット(もしくは順序プロビット)分析を行うなど、社会復帰の有無等も考慮に入れた分析を行う。これらの成果により、評価対象となる効果の範囲を従来よりも拡大する。 CUE(応用都市経済モデル)の適用により、救急救命の効果をとらえることも試みる。 26年度に実施したデータクリーニングの過程で、ウツタイン統計データに矛盾を含むサンプルが少なからず含まれていることが明らかになった。救急救命の緊迫した現場でのデータの収集、記録によるものであり、エラーの発生は致し方ないと考えられ、その処理についての検討が新たな課題となった。 26年度は、この対処に時間を費やすことが多くなったが、その過程で、データの持徴に関する新たな気づきが多くあり、これは27年度以降の検討に活かされるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウツタイン統計データのクリーニングや住民意識調査を中心に進めており、ヒアリング調査の実施に至らなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
海外学会での報告、ヒアリング調査の実施、研究メンバーの打ち合わせや国内学会等での報告に使用する予定である。必要に応じて、住民意識調査を追加で実施する。
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