研究課題/領域番号 |
25289170
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 禎彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10184657)
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研究分担者 |
大河内 由美子 麻布大学, その他部局等, 准教授 (00391079)
浅田 安廣 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60610524)
越後 信哉 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70359777)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 促進酸化 / ナノろ過 / ウイルス / 溶存有機物 / イオン交換 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,酸化処理反応槽における流動特性と化学反応の統合的取り扱いを中心に研究を進めた。その結果,移流-分散方程式と化学反応を統合的可能な数理モデルを構築することができた。あわせて,処理機能評価のために必要なパラメータ,特に原水中にすでに存在している医薬品類とオゾン等の酸化剤との反応速度定数データベースを構築した。これにより,流動と化学反応を同時に考慮し,実施設における微生物リスク評価のための技術的基盤が確保できた。また,実施設内における処理性推定,リスク評価のために要求されるin situプローブ物質の要件についても整理を行い,処理の強度に応じた反応速度の範囲と具体的な候補物質を提示した。 あわせて,遊離残留塩素の高感度分析についてもさらなる検討を進め,3-クロロ-4-ヒドロキシ-安息香酸(CHBA)をプローブ物質として用いることにより,数μg-Cl2/Lのレベルまで結合塩素の影響を受けることなく測定できること,またこの反応は化学量論的に進行し反応効率100%を仮定できるため,従来の分析方法と異なり,塩素を用いた低濃度域での検量線の作成が不要であることを示した。さらに,この方法により水中の次亜臭素酸についても選択的に検出・定量が可能であること示した。遊離塩素の場合とは異なり,反応後の物質(Br-CHBA)の標準品が存在しないが,量論関係から,次亜臭素酸による低濃度域での検量線を作成せずに定量する方法を確立した。 さらに,最終年度の統合的評価に向けて,網羅的な文献考察やこれまでの実験結果を用いて候補プロセスの選択を進め,微生物および親水性化合物除去の観点から促進酸化処理,NF膜処理,イオン交換処理を対象の単位操作として選定した。また,ウイルスについては特にアデノウイルスの感染性を含む定量法について整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
残留塩素の高感度および高選択性分析,ウイルスの感染性評価手法,候補単位操作の取捨,更には実施設における処理性評価のための流動と反応を統合した数理モデルを整備することができたため,概ね予定通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
実施設での微生物評価に必要なin situプローブ物質について精査を行った上で,これを用いて,実験及び数値解析(これまでに構築した各単位操作の流動-反応等のモデルとモンテカルロ法を組み合わせる)により,実スケールの各候補単位操作における病原微生物および有機物の処理性を評価する。また,ベンチスケールにてそれぞれの単位操作実験装置を作成し,様々組み合わせにおける処理水の残留塩素の安定性について検討する(特に極低濃度域の安定性についてCHBAを用いた分析方法により検討する)。さらに,これらの結果とHPCやAOC等微生物指標との関連について検討し,次世代高度浄水処理プロセスを選択するとともに,それに適した水質管理指標を提示する。 最後に,得られた知見を総合し,原水水質に適した浄水処理プロセスの高度化シナリオを示して本研究の結論とする。特に,活性炭処理の位置づけについては,結論の一部として明示する。
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