研究課題/領域番号 |
25289173
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
藤原 拓 高知大学, 自然科学系, 教授 (10314981)
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研究分担者 |
西村 文武 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60283636)
筒井 裕文 高知大学, 自然科学系, 研究員 (70620649)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 用排水システム / 実下水処理施設 / 亜酸化窒素 / 生成機構 / 排出動態 / 対策手法 |
研究実績の概要 |
平成25年度に引き続き、同一の流入下水を3種類の方式で並列処理している実下水処理施設を対象とした定期調査を平成26年5月より実施した。その結果、凝集剤添加型3段ステップ嫌気好気活性汚泥法では溶存態N2O濃度が比較的低かったのに対して、嫌気好気活性汚泥法の好気槽において高いガス態N2O排出量および溶存態N2O濃度が観察され、N2O生成ポテンシャルが高いことが示唆された。そこで、嫌気好気活性汚泥法の好気槽におけるN2O生成機構と影響因子の解明を目的として、センサーを用いた溶存態N2O濃度の連続モニタリングを開始した。その結果、溶存態N2O濃度は午後に高く、17時頃にピークが観察されたのに対して、深夜および早朝の濃度は非常に低く、大きな日間変動を有することが示された。 硝化反応時の亜酸化窒素生成特性を把握し、現象を数理モデル化することを目的として、ラボスケール実験を行った。硝化リアクターからのN2Oの発生は、槽内の亜硝酸性窒素の蓄積との関連は低く、槽内でのアンモニア性窒素の消費と連動して生起することが示された。反応初期にはN2Oの発生速度が大きく、リアクターの継続運転でN2Oの発生割合は低下することが示された。また、急なアンモニア性窒素の負荷の上昇に対しては、N2Oの発生速度はアンモニア性窒素の消費速度と正の相関があり、総括として、アンモニア消費量の約1.8%がN2Oに変換された。AOBによるヒドロキシルアミン生成を経る代謝反応による生成が、硝化菌脱窒よりも、卓越していたものと考えられた。また第1槽におけるアンモニア性窒素濃度とN2O発生速度の関係は、緩やかにMonod式で表現でき、その際の半飽和定数は1.66mg/Lであった。アンモニア性窒素の濃度を安定化させることが、生物学的硝化反応において亜酸化窒素を抑制させる一つの手段になると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標準活性汚泥法をベースとした3種類の処理方式で同一の流入下水を処理する実下水処理施設を対象として、平成25年度に引き続きN2Oの動態に関する調査を実施した。N2O排出調査、水質・負荷量調査等を通じて、嫌気好気活性汚泥法において高いN2O生成ポテンシャルがあることが示唆された。そこで、嫌気好気活性汚泥法の好気槽におけるN2O発生メカニズムと影響因子の解明を目的として、センサーを用いた溶存態N2O濃度の連続モニタリングを開始し、溶存態N2O濃度の日間変動を明らかにした。また、硝化反応時の亜酸化窒素生成現象を数理モデル化することを目的としてラボスケール実験を行い、アンモニア性窒素濃度とN2O発生速度の関係をMonod式で表現するとともに半飽和定数を得た。以上により、研究の目的は概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、N2Oの生成・還元機構を解明する基礎研究を活発に行っている東京農工大学の寺田昭彦准教授を研究分担者に追加し、実下水処理施設におけるN2Oの発生・消失メカニズムの解明に関する研究を加速する。具体的には、年に4回実施する通日調査を通じて、N2Oの動態と微生物機能との関連を明らかにする。また、平成26年度までに引き続き、排出係数の精緻化を目指した調査を実施するとともに、数理モデルによりN2O排出抑制のための対策手法を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が予定より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
人件費として支出し、研究を推進する。
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