研究課題/領域番号 |
25289174
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
荒木 信夫 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (30193072)
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研究分担者 |
押木 守 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 助教 (90540865)
山口 隆司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (10280447)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 都市下水処理 / 嫌気性処理法 / 原生動物 / メタン生成 |
研究実績の概要 |
長岡市の都市下水処理状で運転しているUASBパイロットプラントは装置的な故障で安定した運転ができないため、12L容積のラボスケールリアクターの運転を行い、処理性能とリアクター内に出現する嫌気性原生動物の種と細胞数の計測を行った。COD容積負荷が2.0g-COD/L/d(HRT6時間)程度まで負荷を増大させないと嫌気性原生動物数は10の2乗レベルまでしか増加しない。一方、水温の低下する冬季においてはこの負荷で運転を行っていると流入させている下水(スクリーン通過下水)中のSS成分がリアクター下部に蓄積する現象が発生した。これは都市下水UASBを管理するうえで大きな問題となる可能性が示唆させた。 ラボスケールリアクターに優占して出現した原生動物はMetopus属、Caenomorpha属とLoxophyllum属であった。冬季にはLoxophyllum属が細胞数が他の二属よりも増大したことから低温条件でもある程度の活性を保持するものと考えられる。 嫌気性原生動物を含むラボスケールリアクターの汚泥を種汚泥としてORPを制御した基質を用いた連続実験を行った。基質は実都市下水とし、ORP制御のための電子メディエーターはアントラキノン2,6ジスルホン酸を添加した。ラボスケールに出現した原生動物は-200~-250mV付近で良好に生育したが、-350mV付近では細胞数の維持が困難になり、-450mVでは生育できないことが判明した。都市下水処理UASB内のORPは概ね-200~-250mVの範囲であり、この環境条件が都市下水処理UASB内に嫌気性原生動物に出現していたことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
都市下水を処理するUASBのサイズ(パイロットプラント1000Lとラボスケール12L)によって嫌気性原生動物の出現パターンを大きくことなることが判明した。水温、COD負荷、リアクター内のORP、水理学的滞留時間、基質の連続供給といった実験開始段階で想定していた影響因子だけでは説明できない現象が発生しており、嫌気性原生動物の高濃度培養技術を確立するには新たな影響因子を探す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでどおり都市下水処理状でのリアクターの運転を実施しながら嫌気性原生動物の出現パターンを明らかにする計画である。さらに、都市下水処理UASBが系内の汚泥性状(濃度、グラニュール形成の有無)に及ぼし、及ばされる影響についてラボスケールリアクターを用いた実験で評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
長岡市下水処理場に設置したパイロットプラントの装置的な欠陥が数回発生してしまいスタートアップを繰り返しながら回復を図った。その結果、処理状況は回復しても原生動物数が極めて小さい値に留まっている状態である。原生動物叢を把握するために18S rRNA遺伝子解析を実施することができず、解析のための試薬やクローニング分析の費用が支出できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に都市下水処理UASB内の嫌気性原生動物叢について複数回の解析を予定しており、その解析のための費用として支出する計画である。
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