研究課題/領域番号 |
25289176
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
秋葉 道宏 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (00159336)
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研究分担者 |
岸田 直裕 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (10533359)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水道 / 微生物 / 遺伝子検査 |
研究実績の概要 |
水道水源や飲料水、医療用水等における細菌叢(種類)やその存在量を正確に把握することは、我が国における水衛生問題の健全性を鑑みた上で極めて重要な課題である。水中の細菌叢の解析は、従来、培養に依存した手法によって実施されてきたが、培養困難な微生物が多いこと、また検査に長期間を要することから、特に水道分野においては、網羅的な解析が行われていないのが現状である。そこで本研究では、培養に依存しない解析手法として、蛍光細胞分析分離装置(FACS)および次世代シークエンサーに着目し、水中の細菌叢の網羅的解析技術を確立することを目的としている。本年度は、主に次世代シークエンサーを用いた細菌叢の解析技術について検討を行った。 国内の水道水源等から採取した水試料を対象とした。ポリカーボネイト製のメンブレンフィルターを用いて細菌の濃縮を行った後、核酸を抽出した。16S rRNAを対象としたTailed PCRを実施した後、次世代シークエンス解析(アンプリコンシークエンス)に供した。データ解析には、16S rRNA菌叢解析のパイプラインとなっているQIIMEを用いた。さらに、クローニング解析も実施し、その結果について比較を行った。次世代シークエンサーを用いた場合、1試料あたりの解析遺伝子(リード)数は10万以上となり、クローニング法と比べ非常に多く解析することができた。この結果、クローニング法では検出できないマイナーな細菌種まで検出することができた。このように、次世代シークエンサーを用いることで、網羅性が著しく向上することがわかった。また、複数の試料水における細菌叢・存在量を調査した結果、同じ属であっても種や株によって、水中での挙動が異なることを定量的に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
蛍光細胞分析分離装置を用いた水中に存在する生菌の分離手法については、検討を進めているものの、必ずしも当初の研究実施計画通りには研究は進展していない。既往文献に記載された実験条件を参考に検討を進めたが、生菌・死菌染色を実施した際に、生菌・死菌サンプルの蛍光の差に大きな違いが見られなかった。このため、染色剤の種類や染色条件を変更して検討を行ったが、生菌・死菌を明確に分離する実験条件を確立するには至っていない。 次世代シークエンサーを用いた水中に存在する細菌の網羅的解析技術については、当初の研究実施計画通りに研究が進展している。ポリカーボネイト製のメンブレンフィルターを用いて大量の試料水を濃縮し、核酸を抽出した後に、Tailed PCR、次世代シークエンス解析(アンプリコンシークエンス)に供する手法は、水試料中の細菌叢の網羅的解析に効果的であることが証明された。また様々な水試料を入手し、本手法を適用した結果、適用性の高さを証明することができた。また、真核藻類が保持している葉緑体に存在している16S rRNAを同時に増幅し、解読することで、細菌のみでなく真核藻類も同時に検出することが可能であり、細菌以外の微生物叢の情報入手も可能であることを示した。一方、当初の計画で実施する予定であった、培養法およびノーマルシークエンサとの解析結果の比較については、本年度までに実施することができなかったため、次年度以降に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光細胞分析分離装置を用いた水中に存在する生菌の分離手法については、引き続き可能な範囲で染色条件や装置上での分離条件に関する検討を進める予定である。どうしても蛍光細胞分析分離装置を用いた生菌の分離手法が確立できない場合は、次世代シークエンサーを用いた網羅的な細菌叢の解析技術を中心に研究を進めていきたいと考えている。 次世代シークエンサーを用いた水中に存在する細菌叢の網羅的解析については、本年度までに確立した手法を用いて多くの水試料中の微生物叢を調査したいと考えている。次年度は、昨年度までに実施することができなかった培養法・ノーマルシークエンスを利用した従来の分析・解析手法との比較を主に実施する。作業の迅速性・微生物叢の多様性等の観点から結果を比較することで、新規手法の水試料中における微生物叢解析の有用性を調査する予定である。従来法では、はじめに培養によって生菌コロニーを分離する必要があるが、本研究では、水質管理目標設定項目となっている「従属栄養細菌(R2A培地、20℃、1週間)」の培養条件を参考として、一部修正を行いながら生菌のコロニーを分離する予定である。また、ノーマルシークエンスに供する試料数は、作業性を鑑みて1水試料あたり48試料(リード)程度とする。なお、PCRを利用した手法は、核酸増幅時に微生物種毎にバイアスが生じやすいことが知られているため、内部標準等を利用してこのバイアスを補正する手法についても検討を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の効率的な使用により、残額が発生したため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度未使用額(残額)は、適用試料数を増加させることで発生する消耗品代に充てる予定である。
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