研究課題
本年度の実験では,木造建物の場合,耐力が上がれば固有周期が短くなる事から,地震動の周期特性によっては耐力が高い方が大きな被害が生じてしまう場合があるという仮説を立て,入力地震動と建物耐力をパラメータとした振動実験を行う事で,この仮説を検証した.実験は,(独)防災科学技術研究所の大型一方向振動台で行った.試験体は,2層建物を縮約し,加振直交方向を最低限の寸法とした1層試験体を用いた.加振方向には4箇所耐力壁を配置し,この耐力壁を変える事で,耐力をパラメータとした.試験体数は全10体で5体ずつ2シリーズに分け,各シリーズは,壁の仕様を様々に変えた壁仕様変動シリーズ,構造用合板の性能が打ち付ける釘の量に比例する事を利用し,実質的に壁の量を変動させた壁量変動シリーズとなっている.入力地震動として,最初に,これまでに発生した事が無いような特性,具体的には,周期0.5秒に鋭いピークを持った模擬地震動を入力した.その後,耐力壁の補修を行い,周期0.5秒以下の極短周期が卓越した2003年十勝沖地震のK-NET広尾,建物の大きな被害と相関を持つ周期1-1.5秒応答が大きいK-NET穴水を入力した.加振の結果,模擬地震動では,耐力が大きいほど変形が大きいという,一般的な傾向とは逆の結果となった.最大変形は,最も耐力が高い,耐力壁が構造用合板+二ツ割筋かいの試験体で0.04radであったのに対し,最も耐力が低い三ツ割筋かい試験体では0.02radに収まっていた.補修後に入力したK-NET広尾では,変形は耐力に依らずほぼ一定で0.01rad程度で,K-NET穴水では,耐力は低い程変形は大きいという,一般的な結果となった.以上の事から,木造建物の場合,地震動の周期によっては耐力が高い方が被害は大きくなってしまうという仮設を実証する実験結果を得ることができた.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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