研究課題/領域番号 |
25289184
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
聲高 裕治 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80343234)
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研究分担者 |
吹田 啓一郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70206374)
倉田 真宏 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70624592)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 建築構造・材料 / 防災 / 鋼構造 / 床スラブ / 制振 |
研究実績の概要 |
研究実績は以下の3点にまとめられる. ・振動台実験の実施:試験体は1/3縮小の2層1×1スパン鋼構造立体骨組で,従来の構法であるコンクリートスラブとH形鋼梁を頭付きスタッドで一体化した合成梁試験体,本研究で提案しているコンクリートスラブと梁の間に積層型粘弾性体を挿入した制振・純鉄骨梁試験体,粘弾性体のせん断変形を拘束した非制振・純鉄骨梁試験体の3種類である.3次元振動台を用いて,BCJ L2地震動を原波の25~150%の倍率で,0度,45度,90度方向に入力した.その結果,骨組の層間変形や部材の損傷は,非制振試験体,合成梁試験体,制振試験体の順に大きく,骨組の層せん断力や床上の加速度は,合成梁試験体,非制振試験体,制振試験体の順に大きいことが明らかになり,実ディテールを有する鋼構造骨組に対して制振床を適用することで地震応答が低減できることを実証した. ・鉛直振動実験の実施:2層骨組試験体のコンクリートスラブ上に起震機を設置し,鉛直方向の振動実験を行った.合成梁試験体と制振試験体とで,スラブの振動モードや卓越する振動数に差があることを確認した. ・施工性の確認:2層骨組試験体の製作を通じて,制振床を用いた場合の施工性を確認した.その結果,制振床のコンクリート打設時に支保工が必要になる可能性があること以外は,従来のスラブと同等の施工性を有していることを把握した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013~2014年度では,当初計画していた実験や数値解析等を順調に実施しており,本研究で提案している「制振床システム」の実用化という目的に向かって申請時に想定した課題を一つずつ着実に解決できている.このような観点から,現時点までの進捗状況はおおむね順調といえる. その一方で,研究を推進していく中で,新たに以下の2項目の課題が確認された. ・積層型粘弾性体に床荷重等の鉛直荷重が作用したときの圧縮特性(静的変形・クリープ変形)を把握し,実施適用時の粘弾性体の縮みを考慮した地震応答の評価方法を構築すること. ・鉛直振動時のスラブの振動モードや振動数に及ぼす粘弾性体設置位置の影響を把握すること. 「制振床システム」の実用化に際しては,今後,上記の課題を早急に解決する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
「制振床システム」の実用化のために解決すべき課題としては,「11.現在までの到達度」で示した2項目に加えて,当初2015年度での実施を計画していた以下の3点が残されている. ・制振床の遮音性の確認 ・耐火被覆の地震時変形追従性の確認 ・制振床を適用した鋼構造骨組の解体性の確認 残された研究期間は1年であるため,上記の課題をすべてクリアすることは人的・費用的に困難と考えられる.特に,耐火被覆の地震時変形追従性の確認には,実大寸法での実験を行う必要がある.また,制振床の遮音性の確認は,実験手法の構築から新規に開拓していく必要がある.これらを勘案して2015年度には,2014年度までに新たに確認された課題の解決を優先し,制振床の実用化に向けて,一つでも未解決課題の山積を減らすことに尽力しつつ,当初予定した研究課題である骨組の解体性の確認を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の2点が主な理由である. ・実験期間を短縮することができ,研究協力者に対する謝金を減額できたこと. ・実験のための打合せにメールやスカイプ等を使用し,出張の回数を減らして旅費を減額できたこと.
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次年度使用額の使用計画 |
新たに実施する必要の生じた積層型粘弾性体の圧縮特性把握のための実験費用として充当する予定である.
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