研究課題/領域番号 |
25289185
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
李 柱国 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (50432737)
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研究分担者 |
大久保 孝昭 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60185220)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コンクリート / 火害 / 補修 / ジオポリマー / 性能回復 / 補修工法 / ひび割れ / 再養生 |
研究実績の概要 |
平26年度にジオポリマー系補修材料(GP補修材)の開発および補修効果の検証を行った。 1. 加熱されたコンクリートの注入補修実験を行い、GP補修材を微細なひび割れに適用する浸透拡散型補修材と粗いひび割れに適用する注入充填型補修材に分けて、それぞれの粘度、可使時間および圧縮強度などの性能要求を検討して明らかにした。 2. GP補修材を試作し、性能を測定した上で調合を確定した。比表面積が8000cm2/g以上の高炉スラグ微粉末を主活性フィラーとしたGP補修材の可使時間を延長する無機混和材を検討した。混和材の使用がGP補修材の可使時間と強度に与える影響を調べ、GP補修材に40分以上の可使時間、かつ45MPa以上の圧縮強度を有させるための添加材の最適な添加率を提案した。また、アルカリ溶液の組成および濃度がGP補修材の粘度、可使時間に与える影響を考察し、浸透拡散型補修材および充填型補修材の最適なアルカリ溶液の組成・濃度と液固比をそれぞれ明らかにした。なお、GP補修材の硬化過程では脱水によって生じる乾燥収縮による体積減少が発生させない2種目の混和材を開発した。GP補修材の体積変化を測定し、混和材2の最適な添加率と液固比の関係を明らかにした。被補修コンクリートの吸水を考慮して、透水シートの使用有無の場合のGP補修材の圧縮強度を比べ、使用した場合の強度が高いことを明らかにした。 3. GP補修材の接着性を調べ、実用性を検証した。含水率が100%,60%および0%のコンクリートの表面にGP補修材の試験片を作成して、直接引張試験で接着強度を測定し、含水状態が接着性能に与える影響を検討した。また、セメントペーストの接着強度と比べ、GP補修材の優位性を検証した。なお、コンクリート曲げ試験体と鉄筋コンクリートの付着強度試験体の接着・補修実験を行い、接着前後の曲げ強度と付着強度を測定・比較することによって、GP補修材のコンクリート補修への実用性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりに、ジオポリマー系補修材料の性能要求、材料配合および性能(強度、可使時間、粘度、接着性能等)を検討して、補修材料の開発に成功し、曲げ強度と鉄筋コンクリートの試験体の補修実験によって、その補修材料としての実用性を明らかにした。現在、開発した補修材の可使時間は40分程度であり、通常の補修実務上の要求を満足しているが、1時間以上に延長すれば、施工性能はあらゆるの場合(例えば、広範囲の補修作業)を満足できると考えられる。したがって、可使時間を延長する混和材の検討を続ける。
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今後の研究の推進方策 |
ジオポリマー補修材の可使時間を延長するために、二つの方法を検討する予定である。一つ目は、混和材1の他に遅延剤の添加を試みる。遅延剤の開発は既に成功した。二つ目は、高炉スラグ微粉末の代わりに、フライアッシュをジオポリマーの活性フィラーとして、また強度を高めるために石灰や都市ごみ焼却灰溶融スラグ微粉末を添加する。フライアッシュジオポリマーの常温可使時間は12時間以上で長いが、常温硬化の強度は35MPa以下である。可使時間が1時間以上であることを確保するための石灰や都市ごみ焼却灰溶融スラグ微粉末の添加率を検討する。 また、ジオポリマー補修材の早期乾燥収縮の評価は、現在試験体の寸法測定で行ってきた。埋め込みゲージ法で精確に評価するのは必要である。その正確な評価に基づいて、補修材の液固比、補修されるコンクリートの有効吸水率および環境温度・湿度が乾燥収縮の制御混和材2の添加率に与える影響を詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に、加熱したコンクリートの性能が本研究で開発したジオポリマー系補修材の補修で回復できることを検証する実験を行う予定である。この検証実験を実施するために、共鳴法非破壊試験機(約103万円)の購入は必要である。しかし、平成27年度の内定交付額で共鳴法非破壊試験機を購入すると、研究費はほとんど使われてしまう。このため、平成26年度に経費支出を節約・調整して94.9万円を繰り越して平成27年度に使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
コンクリートの補修後の性能を測定するために必要となる共鳴法非破壊試験機を購入する予定である。
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