研究課題/領域番号 |
25289187
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
板垣 直行 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (00271891)
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研究分担者 |
川鍋 亜衣子 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 准教授 (40404850)
長谷川 兼一 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (50293494)
石山 智 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (80315647)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 建築構造・材料 / 木造構法 / 耐震性 / 居住環境 / リユース / 丸太組み構法 |
研究実績の概要 |
本研究では、東日本大震災において建設された様々な木造応急仮設住宅を調査し、構法形式および構造性能、温熱環境を中心とした居住環境、木材の供給・加工方法、といった観点から整理・分析を行い、課題や改善点を踏まえ、復興住宅に転用可能な新たな木造応急 仮設住宅の開発を行ってきた。昨年度までに一般住宅への転用を考慮した構造性能および居住環境を確保する構法として、縦ログパネル壁による構法、および木ダボ接着接合を用いた木質ラーメン構造の住宅構法を活用することを検討した。平成27年度においては、平成26年度に検討が不足していた実務レベルでの低コスト化のための検討をさらに進め、モデル仮設の基本要素の評価、設計に取り組んだ。 ○架構ユニットの構造性能評価(板垣、石山) 検討された構法による基本架構ユニットとなる縦ログ耐力壁、ラーメンフレームについて、静的な実大加力試験を実施し、構造性能を検証した。縦ログ耐力壁に関しては、構造耐力要素の見直しを行い、ビスによる接合方法を改良することにより3倍以上の性能を得ることができた。また、ラーメンフレームについては、木ダボ接着接合のモーメント抵抗試験およびフレーム要素試験を実施し、そのデータを基にしたフレーム解析を行って構造性能を検討した。さらに、これらの縦ログ耐力壁およびラーメンフレームを組み合わせた建物全体の構造性能について、壁量計算および構造解析により検討した。 ○モデル仮設住宅の設計(板垣、長谷川、川鍋、石山) 以上の検討を踏まえて、仮設住宅の構法、仕様を決定し、モデル仮設住宅を、実務者を交えて設計した。建物の施工においては、災害時の状況を考慮し、材料の調達がしやすいものを選定すると共に、施工の合理化を検討した。当初は年度内に着工する予定でいたが、縦ログ耐力壁の公的性能評価機関における性能評価の結果を待って、次年度において最終的な設計完了、施工を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
縦ログ耐力壁に関しては、既往の試験により得られた壁倍率が2倍弱とやや低いため、構造耐力要素の見直しを行い、縦ログ耐力壁の壁倍率の向上のための改良を行った。しかしながら当初行った改良方法ではほとんど効果が得られず、数度の改良を重ねることとなった。最終的に予備実験において3倍以上の壁倍率を得ることができ、新たに国土交通大臣認定を得るための性能評価試験を実施することとなったが、性能評価機関の都合もあり、試験の実施は平成28年3月に行われることとなった。モデル仮設住宅において使用する耐力壁も、将来的な実用性を考えると大臣認定に則った仕様にした方が良いと判断されたため、性能評価試験の結果を踏まえて最終的な仕様が決定してから、モデル仮設住宅の設計仕様も確定することとした。その場合、縦ログ用の木材の乾燥時間などを考えると年度内に着工することは困難であった。このため、当初予定していた平成27年度中の施工を次年度に先送りすることとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、まず平成27年度に設計されたモデル仮設住宅の設計仕様に基づいて縦ログ耐力壁を製作し、モデル仮設住宅の施工を実施する。その後建設されたモデル仮設住宅を用いて居住環境の計測を行い、木造仮設住宅の環境特性を検証する。そられの結果を踏まえて、最終年度とした成果の取りまとめを行う。具体的には以下の通り検討を進めていく予定である。 ○モデル仮設住宅の設計および施工(板垣、長谷川、川鍋、石山) 最終的な仮設住宅の構法、仕様に基づき、実務者を交えてモデル仮設住宅の積算・施工を行う。建物の施工においては、災害時の状況を考慮し、材料の調達がしやすいものを選定すると共に、できるだけ合理的な施工方法を検討する。実際の施工においては、作業工程における、工数・人工を調査し、施工性を検証する。さらに、これらの調査結果に基づき、より合理的な施工方法を検討する。 ○モデル仮設住宅の居住性評価(長谷川、板垣) 建設された仮設住宅について各種環境性能の測定を行う。特に温熱環境については、継続的なデータの計測を行い、夏期および冬期の居住性を検証する。さらに計測結果より環境性能として大きな問題があれば、改善方法を検討する。 ○研究総括(板垣、長谷川、川鍋、石山) 以上の研究成果を取りまとめて、東日本大震災において建設された木造応急仮設住宅の効果や意義の検証結果を明らかにする。また、今後の大規模災害に向けて開発した一般住宅に転用可能な木造応急仮設住宅の仕様書および標準型の図面をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたモデル仮設住宅の施工が今年度に先送りされたため、その費用を次年度に回すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
縦ログパネルの製作費用をはじめ、モデル仮設住宅の資材、施工費用として適宜使用していく予定である。
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