研究課題/領域番号 |
25289190
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
荒木 秀夫 広島工業大学, 工学部, 教授 (40159497)
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研究分担者 |
貞末 和史 広島工業大学, 工学部, 准教授 (20401573)
八十島 章 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 助教 (80437574)
寺井 雅和 近畿大学, 工学部, 准教授 (90320035)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 既存建物 / 耐震診断 / コンクリート / 実部材 / せん断強度 |
研究実績の概要 |
既存建物の耐震性能評価で問題についてこれまで申請者が蓄積してきた研究成果をまとめて国内外に情報発信するとともに本研究課題に関する資料を収集した。 25年度に解体された築50年のB市小学校より梁を2本および柱1本入手し,このうち梁の載荷試験を実施した。取り出した梁の両端に加力用コンクリートスタブを新設し,代表申請者が所属する大学の2軸載荷装置を使用し,逆対称曲げ加力方式で実験を実施した。試験体はせん断破壊型になるよう梁のスパン長を調整している。当該建物のコンクリートは軽量コンクリートが使用され,かつ低強度コンクリートであることが事前の調査で明らかになっている。せん断耐力についてはこの2つの影響を考慮することにより,既往の評価式が適用可能であること確認した。また既存梁はジャンカやコールドジョイントなどの施工不良が散見され2体のうち1体にエポキシ樹脂を注入して補強効果につて検討した。その結果,剛性,耐力,靭性が著しく向上することが分かった。特に最大耐力はエポキシ樹脂を注入しないものに比べ1.5倍上昇することがわかった。この結果は日本コンクリート工学会の論文集に投稿し条件付き採用となっている。また,同様の内容について国際会議SMAR2015Antalya(Turkey)に投稿中である。 これまでに収集した既存建物からのコンクリートの力学的特性についてはIABSE2014 Madridで発表した。平成25年度に実施した実大梁の曲げ試験については国内ではJCI2014に投稿・発表し,国外ではFib2015Copenhagenで発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書中25年度実施計画にある1)建築物関係の実構造物実験についての資料収集については行われた研究そのものが少なく,実験事例の収集は数例に留まったため,代表研究者が一昨年実施した実部材の性能評価について再度見直しを行うとともに,既存建物の耐震性能評価の問題点を過去の実験結果から抽出した。一方,2)実部材の入手,3)実験実施については,25年度に曲げ試験を実施し,26年度にその成果を国内外に情報発信している。26年度は梁のせん断試験を実施し,既往の評価式との整合性や補強の無による相違点などを主たる検討項目としてデータを分析している。現在その成果を国内外に情報発信中である。27年度は既存建物のコンクリートについては追加収集予定である。また、部材については入手済みの柱部材の耐震性能把握実験およびその結果分析を実施する予定であり申請時に計画した内容についてほぼ予定通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度入手した柱部材の載荷試験を実施する予定である。入手した部材のうち1体は昨年度実施した部材とほぼ同じで代表研究者が所属する大学の2軸載荷装置で加力可能であり,逆対称曲げ加力方式を採用する予定である。現在実部材を加力用に整形中である。他の2本の柱は本学の加力装置では軸力の載荷が能力を超えているため他の施設(福山大学のハイテクリサーチセンター)を借用して実験実施する予定である。実験においてはせん断性能を主たる検討項目とし,既往の評価式と比較する。また,可能な限り解体建物から実部材やコンクリートを入手し,データを蓄積することで研究成果の妥当性を高めてゆく予定である。 最終的に得られた成果を総括し,既往の鉄筋コンクリート造建物の診断精度を向上させるための提案を行い,建物の長寿命化に資する成果を提出したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実部材の実験費用を高く見積もりすぎていたが本学の学生等の協力により実費のみとなったことなどによる。また、26年度実施予定の柱部材の実験を27年度に実施することとしたため予算を繰り越すよう予算使用したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
実部材を試験体用に成型する作業が大掛かりとなるため外注を予定していること、および実験実施費用と実験実施補助アルバイトに充てる予定である.
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