本研究では、近年相次いで顕在化した建築物の甚大な竜巻被害の実態を踏まえ、既往の科研費課題で開発した竜巻発生装置を活用した低層建築物の風圧実験を実施した。また、その結果を踏まえて、竜巻による突風荷重モデルの精緻化を行った。具体的には、竜巻と建築物との間の相対的な大小関係に関するパラメータをモデルに導入し、屋根に鉛直上向きに作用する突風荷重が建築物の規模が小さいほど大きくなる傾向を示した。 また、竜巻の作用を受ける大規模な屋根を有する鉄骨造施設に着目し、折板屋根と鋼板製外壁の有限要素モデルを構築した。そして、上記の風圧実験データを用いて、屋根上を竜巻が通過する状況を想定した時刻歴応答解析を行って竜巻による被災機構を解明した。解析の結果、竜巻状気流の最大接線風速が60m/s(卓越開口がない場合)、30m/s(卓越開口がある場合)を超えるとそれぞれ損傷範囲が拡大しはじめる傾向が得られた。 以上の実験的・解析的検討の結果は、大規模屋根等の対竜巻性能の検証、竜巻による損傷範囲の検証及び可視化に資すると考えられる。
|