研究課題/領域番号 |
25289197
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
尾崎 明仁 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (90221853)
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研究分担者 |
福田 展淳 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (00267478)
隈 裕子 サイバー大学, 総合情報学部, 講師 (10617749)
李 明香 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (00734766)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 建築環境・設備 / 再生可能エネルギー / 省エネルギー / 人間生活環境 |
研究実績の概要 |
本研究では,①相変化熱(PCM)を利用して蓄熱するとともに,優れた吸放湿特性を有する蓄熱・調湿建材の開発,②熱・水分・空気連成を考慮したオブジェクト指向型の建築環境解析ソフトの開発,③室内温湿度および暖冷房負荷を目的変数,建築仕様やライフスタイルを説明変数とした熱・水分・空気の複合移動に関わる要因解析,④蓄熱と調湿を利用した室内温湿度のパッシブ制御および省エネルギー性能の評価,⑤蓄熱・調湿建材を有効活用するための自然エネルギー利用と建築仕様に関わる設計指針の提案,を目的としている。 平成26年度は,蓄熱・調湿建材(多孔質調湿材にPCMマイクロカプセルを含有させた板状建材)の開発,建築の熱と水分と空気の連成移動を非平衡熱力学に則り非線形現象として表現した数値シミュレーションソフトの開発を行った。また,室内温湿度および暖冷房負荷を目的変数,建築仕様やライフスタイルなどの影響因子を説明変数としてパラメータ感度解析を行い,蓄熱・調湿性能を有する多機能建材を有効活用するための設計指針について検討した。 さらに,それらの結果を基に,恒温恒湿性能を備えた自然エネルギー利用パッシブ住宅を全国6地域(旭川,札幌,岩手,福井,愛知,宮崎)に建設し,温湿度環境の測定と住環境性能の解析・評価を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然エネルギーを利用し恒温性と恒湿性を備える高機能パッシブ住宅の設計を目的として,工業建材を主とする最近の乾式住宅にも適用可能な蓄熱と調湿の特性を有する多機能建材を開発している。また,環境試験室における模型実験,試験住宅を使用した屋外実験,および熱・水分・空気連成を考慮した建築温湿度・熱負荷の数値シミュレーションにより,蓄熱・調湿特性を活用し,太陽熱や外気冷房などの自然エネルギーを利用した恒温恒湿性能に優れる高機能パッシブ住宅の設計指針について考案している。それらの結果を基に,全国6地域(旭川,札幌,岩手,福井,愛知,宮崎)に高機能パッシブ住宅を建設し,温湿度環境の測定と住環境性能の解析・評価を開始した。 さらに,蓄熱や調湿などのパッシブ技術による室内熱環境の調整や省エネルギーの効果を幅広く検討できるように,数値解析のためのオブジェクト指向型プログラムの開発している。その数値シミュレーションプログラムは,協同研究機関にも公開して普及を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度~平成26年度に引き続いて,熱と水分と空気の連成を考慮した建築全体の熱環境解析ソフトの開発,その入力用物性値の整備,蓄熱・調湿建材による室内温湿度のパッシブ制御および省エネルギー性に関する数値シミュレーションを行う。同時に,建設した高機能パッシブ住宅の室内温湿度および暖冷房負荷を測定し,その恒温恒湿性能を明らかにするとともに,熱環境解析ソフトの精度について検証する。また,建築仕様,ライフスタイル,気象条件と室内温湿度および暖冷房負荷の関係を明らかにし,住宅における恒温恒湿性能のガイドラインを提案する。 具体的には,(1)多孔質調湿材にPCMマイクロカプセルを含有させた蓄熱・調湿建材の開発,(2)オブジェクト指向型の伝熱物理に忠実な建築熱環境解析ソフトの開発,(3)熱・湿気物性値の整備と推定方法の提案,(4)熱と水分と空気の複合移動解析に基づく室内温湿度と暖冷房負荷の要因解析,(5)建設した高機能パッシブ住宅の室内温湿度および暖冷房負荷を測定と解析・評価,(6)自然エネルギーを利用した蓄熱・調湿による室内温湿度のパッシブ制御および省エネルギー性能の評価と性能ガイドラインの提案,(7)恒温恒湿性能に優れる多機能建材を有効活用するための高機能パッシブ住宅の設計指針の構築,について検討する。
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