研究課題/領域番号 |
25289198
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
柳 宇 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50370945)
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研究分担者 |
鍵 直樹 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (20345383)
鎌田 洋一 岩手大学, 農学部, 教授 (20152837)
野部 達夫 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40338273)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 個別空調 / 室内空気質 / 微生物 / 汚染対策 / 省エネ |
研究概要 |
これまで、実態調査と実験を行い、その成果を国内学会発表3件で発表している(詳細について業績リストを参照)。また、今後の国内、海外学会での発表を行うほか、原著論文にまとめる予定である。 ・本研究では個別分散型空調機内における付着微生物汚染実態の調査を行い、次の事柄が明らかになった。細菌については、全体的にBacillus sp.,Staphylococcus sp.,Arthrobacter sp, Microbacterium sp.,Micrococcus sp.の検出率が高かった。また,日和見病原菌等の病原性菌が全ての物件から検出され,Staphylococcus hominisやStaphylococcus epidermidisなどのStaphylococcus sp.や,Bacillus cereusなどが多かった。一方、真菌については、室内環境でも高頻度に検出されるAspergillus sp.,Cladosporium sp.,Penicillium sp. が顕著に検出されたほか,酵母であるCryptococcus sp.,Rhodotorula sp.,Trichosporon sp.の占める割合が非常に高かった。また、マイコトキシンについては、カビ間に”競争原理”が働いていることが、他種カビのマイコトキシンに侵された場合のカビの生育状況と代謝物(MVOC)の発生量が変化することが認められた。 ・個別方式空調機の消費電力、空調機内と室内の温湿度の連続測定を行い、一定の知見がえられ、次年度の研究に必要なデータを得た。 ・個別方式空調機内の温湿度の測定結果を解析し、相対湿度70%以上の累積出現時間が30%を超えると、カビの増殖速度がそれに比例して速くなることが明らかになった。また、その速度は湿度の変動に影響され、変動係数が10%を超えるとカビの増殖速度が遅くなることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで研究の実施状況は以下に示す通りである。 ・個別空調機内微生物汚染実態の調査:7ビルにおける個別空調機内微生物汚染実を継続的に測定し、その汚染量と種類を明らかにした。また、実験でも、空調機構成材(アルミ、断熱材など)表面での増殖を確認した。さらには、空調機内温湿度環境とカビの増殖速度間の関係を定量した。 ・マイコトキシンによるカビ生育への影響に関する基礎実験:Cladosporium sphaerospermum, Penicillium chrysogenum, Penicillium expansum, Rhodotorula mucilaginosaの4種のカビを用いた実験より、微生物の生育間に競争原理が働いていることが明らかになった。 ・同じ執務室に使用した2系統の個別方式空調機内微生物汚染に関する継続的な測定と消費電力の連続測定を行っている。2014年夏期に行う予定の空調機クリーニング前後の比較に関する基礎データを得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では下記に示す研究を実施する。 ・分散型個別空調機内微生物・MVOC・温湿度の追加調査(柳 宇,鍵直樹):平成25 年度で行った調査の結果を踏めて,調査対象の空調機10 台程度における継続的な調査を行い,空調機内微生物汚染の経年変化状況を把握する。 ・空調機内付着微生物の菌叢・アレルゲン・マイコトキシンデータベースの構築(柳 宇,鎌田洋一):平成25年度では、マイコトキシンなどの解析が遅れているが、今年度では、その遅れを取り戻すために、個別空調機のほか、個別空調機と比較のために、中央方式空調機平成25 年度で行った微生物の測定結果をデータベース化するとともに,微生物汚染と温湿度環境,運転方法の関連性について詳細な解析を行い,空調機内の微生物菌叢と空調機運転状況,温湿度の関連付けについて検討を行う。 ・空調機における殺菌・除菌効果の実証(柳 宇,鍵直樹):平成25 年度で行った基礎実験の結果を基に,殺菌・除菌方策を施した熱交換コイル,気化式加湿器を実環境に使用した場合の殺菌・除菌効果とその持続性を検証する。 ・空調機における殺菌・除菌処置を施した場合の省エネ効果の検証(柳 宇,野部達夫):同じビルにおいて,何も処置を施さない空調機(コントロール)と,殺菌・除菌処置を空調機(ケース)において,空調機内,屋外機,外気の温湿度を連続測定し,空調運転のエネルギーを算出し,省エネ効果を定量する。なお,パッケージ型空調機のエネルギー消費の評価手法については,申請者らが既往の研究より確立している。
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次年度の研究費の使用計画 |
個別方式空調機内における微生物汚染の実態と消費電力の測定は主として夏期と冬期に行うが、2013年度の調査においては、消費エネルギーを調査できる物件について依頼を行った結果、殆どの物件は2014年の夏期に行うこととなった。 2014年度の夏期に行う予定である。これまで、既に10ビルのクリーンニングを行う予定である。
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