研究課題/領域番号 |
25289205
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神吉 紀世子 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70243061)
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研究分担者 |
小浦 久子 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30243174)
中尾 史郎 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (10294307)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オーセンティシティ / 文化的景観 / 可視化 / 旧日根荘 / 地域主体 |
研究概要 |
本研究は、環境や空間構成の特徴を受け継ぎつつ変化を許容し新時代の景観へと進化する保全アプローチにむけて「動的オーセンティシティ(Dynamic Authenticity)」に着目し、その構造描出法と可視化の基本的技術を提示できるようにすることを目標として、具体的な研究方法として、事例地での調査を通じた構造把握とその可視化作業、可視化ツールの 開発と事例地での地域主体との協力による評価、を行うこととしている。 1年目である平成25年度は、研究開始の以前より調査蓄積があった、大阪府泉佐野市大木地区(平成25年度中に重要文化的景観「日根荘大木の農村景観」として選定された)を主たる対象地とし、この事例の文化的景観の構造把握に必要な、既存調査の追加作業、新規調査(地形・土地利用・民俗・生物相等に関わる未解明部分等)調査等を行った。また、得られた調査成果の時間軸方向での評価等、第1次評価を現地の協力のもとに検討した。 また、海外事例として、この50年に象徴的な変動がありつつ独特の景観が再評価されている例としてチェコ・プラハ市の社会主義時代に開発された集合住宅地域の景観をとりあげることができるようになり、文献・資料収集、住宅開発とその後の環境変化にかかわる現地調査(住民へのヒアリング調査、長年にわたり環境再生事業を実施している区行政、管理会社等へのヒアリング調査)、住宅団地の改修とそのデザイン変化に関わる現地調査等を進め、時間軸に、社会主義時代以前・社会主義時代・民主化後の大きく影響する意味づけがある事例地での動的オーセンティシティの発現構造を検討した。 また、来年度以降の議論のために、「熊野古道中辺路の沿道集落」「ボロブドゥール地方の農村地域」についての既往の調査成果・研究の整理等、準備的作業に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定の大阪府泉佐野市大木地区での調査・分析がほぼ予定のとおりに進捗できたことに加え、チェコ・プラハの事例地との協力体制が出来、ここでの調査・分析等が大きく進捗した。これらから、平成25年度については順調に進展したと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度の泉佐野市大木地区(日根荘大木の農村景観)での成果を用いて可視化手法の開発作業を進める。これにより促進される景観認知の深化を評価するための現地での参加型調査を行い開発にフィードバックするように準備を行っている。プラハ市の集合住宅地域についても得られた成果を住民にフィードバックし、時間軸上の蓄積に目をむけた地域の動的オーセンティシティの認識についての評価を得るよう準備しつつある。さらに「熊野古道中辺路の沿道集落」について、中世由来の遺産を含む文化的景観である点と近年の過疎化による土地管理の変化の点をあわせた保全方針の必要性に着目した、オーセンティックな土地管理の粗放化策というテーマ設定、さらに「ボロブドゥール地方の農村地域」について、寺院遺跡(世界遺産)周辺農村の住民組織により取組まれ始めている観光コミュニティビジネスの導入における動的オーセンティシティの組み込み方というテーマ設定のもとに、本研究の手法の試適用作業を行う。 平成27年度は、可視化手法を用いたことによる景観認知の結果および各事例地の設定テーマに対して手法適用の結果得られる方針案の議論を、現地の協力者とともに行うワークショップにおいて評価し手法の成果を評価する。これらをフィードバックすることによって、動的オーセンティシティの4次元的発現構造の理論化の最終とりまとめを行い、可視化の基本形を整理しその適用性を考察することを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
大阪府泉佐野市大木地区における研究において、当該地区が平成25年度中に重要文化的景観に選定される機会と重なったことなどから、打ち合わせや作業協力等について、こちらでの費用負担をせずに打ち合わせ等実施可能な機会を数回もつことができたこと、一方、プラハ市での調査が非常に進捗したためその作業増加分についての前倒し請求(100,000円)を行ったものの、結局はこれを使わずに作業が完了したことなどから、次年度使用額が発生した。 次年度使用額が発生したものの、作業等は順調に進んだことから、今後得られたまとめを逐次、論文発表や議論の進展のための情報交流等にいかしていくことが望まれるが、こうした発表・交流等は平成25年度には大きな進捗は得られなかったため、この点に注力することに次年度使用額分をあてていきたいと考えている。
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