研究課題/領域番号 |
25289207
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阿部 浩和 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (20346125)
|
研究分担者 |
宮川 智子 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (30351240)
黒瀬 武史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50598597)
保高 徹生 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 研究員 (60610417)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 土壌汚染 / 都市再生 / リスクコミュニケーション |
研究概要 |
本研究はシビアな環境汚染に起因するブラウンフィールドの再生に求められる除染対策と適切なリスクコミュニケーションのあり方を検討することを目的としている。本年度は当該ブラウンフィールドに関して「諸外国の事例調査、情報収集」と「福島における土壌汚染に関する現状把握と課題抽出」の2つの調査研究を実施した。 前者については諸外国の重大な環境汚染事例を収集し、それぞれのケースで実施された取り組みと制度的フレームワークを調査し、汚染レベルと除染地のクライテリアによって整理した。ここでシビアな環境汚染サイトの問題は、多くの国で一般のブラウンフィールドとは区別して扱われる傾向があること、米国ではNPLとして政府機関の管理下に置かれ、英国ではSPECIALSITE(PARTIIA)やハードコアサイトとして汚染対策を実施していること、日本では人の立ち入りの可能性の有無によって判断しているのに対して英国などでは汚染物質の種類ごとに長期暴露による健康リスクを評価するリスクベースの評価手法をとっていることなどを示した。 後者については、福島の土壌汚染対策の現状について除染の進捗状況、避難者の動向、不動産価格の推移などを把握し、国内の共同研究者とのミーティングを行うとともに、福島市で開催されたセミナーや現在除染作業が進む伊達市月舘地区、糠田地区にて情報収集を行い、土壌汚染対策の課題項目を抽出した。ここで福島における不動産価格の動向をみると、2011年に一端急落したものの、原発直近の相双地区を除いてその後、回復傾向がみられ、土壌汚染地のスティグマによる影響は米国のスリーマイル島事故後の傾向と類似していることなどを示した。 また以上の結果をもとに英国レディング大学にてリサーチミーティングを実施することで、シビアな汚染地の再利用に関わるリスクコミュニケーションの重要性を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
諸外国の事例調査、情報収集に多くの時間を要したため、福島における土壌汚染に関する現状把握と課題抽出を開始するのがやや遅れたが、震災以降の不動産価格の推移や除染対策の状況を把握し、土壌汚染対策に係る課題項目の設定を行い、英国でリサーチミーティングを実施することができた。現在、課題項目の検証プロセスを進めており、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
・現在、進めている課題検証作業を完了させるとともに、除染地のリスクコミュニケーションに関する本調査を実施する予定であり、ICT技術を用いた解析手法を導入することによって作業効率を高めることとしている。 ・本調査で得られた成果をもとに英国で専門知識提供者を交えたワークショップを実施し、除染地のリスクコミュニケーションのための要件を整理する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は前年度の課題項目の検証に係る作業が途上にあることに伴うものであり、今後作業の完了と共に使用する予定である 次年度にはワークショップに係る費用、関連する学会等に発表する費用、ICT技術を利用した解析手法を導入する費用などに使用する予定である。
|