研究課題/領域番号 |
25289209
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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研究分担者 |
佐藤 岩夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80154037)
越山 健治 関西大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40311774)
大堀 研 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (20436603)
糟谷 佐紀 神戸学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90411876)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 住宅復興 / 仮設住宅 / みなし仮設住宅 / 災害公営住宅 / 住宅再建 / 生活再建 / 住宅ローン |
研究概要 |
釜石市の仮設住宅および「みなし仮設住宅」に居住している被災世帯を対象とし、住宅関連の実態と意向に関するアンケート調査を実施し、その結果を過去2回の調査の結果と比較することによって、住まいに関する被災者の状況とその変化を分析した。その結果、(1)被災世帯はより高齢、より小規模になってきている、(2)若者の世帯分離が世帯変化を促進した、(3)無職の世帯が増加し、経済上の不安定さをかかえる世帯が増えている、(4)分離している世帯員との将来の再同居を望む世帯が多い、(5)被災者の居住地希望では、震災前に住んでいた場所には戻れないと判断する世帯が増加した、(6)住宅希望については、持家希望が減少し、公営住宅希望が増加した、(7)震災発生から3年近くが経過した時点において、仮設住宅からの転居先が決まっていない世帯が半数を超える、などの諸点が明らかになった。被災者の実態・意向は、固定せず、変化し続ける。本研究では、同一対象に対する調査を続けることで、被災者の状況変化を追跡することが可能となった。この変化の把握は、復興政策の検証・改善にとって重要である。 さらに、国レベルでの住宅復興政策の動向をふまえたうえで、釜石市、南三陸町、女川町、仙台市、岩沼市、名取市、浪江町などを訪問し、自治体レベルでの住宅施策・制度について聞き取り調査を行った。これにもとづき、仮設住宅での高齢者見守りなどのソフト面の施策、「みなし仮設」住宅の制度運用実態、復興公営住宅の計画・建設状況、その建築上の工夫、住宅ローンの私的整理制度、持家再建支援補助、防災集団移転促進・土地区画整理事業等における住宅再建支援、それに関連する借地供給の実態、遠隔地避難者との連絡状況などについて、実績と課題を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心は、被災者に対する大規模なアンケート調査を年1回のペースで実施する点にある。科研費の研究補助が決まるまでに2回の調査を実施し、科研費初年度に3回目を実施することができた。同一の対象への調査を繰り返すという本研究は、他にはみられないもので、被災者の状況変化を解明するうえで、重要な役割をはたすと考えている。 被災者実態の把握とともに重要なのは、住宅復興の政策・制度の実態・実績を調べ、その課題を明らかにする作業である。これに関して、東北太平洋沿岸地域の自治体を複数回にわたって訪問し、最新資料を集め続けることによって、住宅関連の政策・制度の評価分析を進めることができた。 以上のように、研究計画にもとづき、被災者実態調査と自治体調査を実施し、それにもとづく実証的な成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
この研究の中心は、被災者実態に関するアンケート調査を継続する点にある。このため、今年度および来年度においても、調査を着実に計画・実施することが、重要な目標になる。関係諸機関との連携のもとで、有意義な調査となるよう、いっそう努力したい。また、時間の経過にともない、調査対象を変えていく必要が生じると考えられる。これまでは、仮設住宅と「みなし仮設住宅」に住んでいる世帯がおもな対象であった。今年度以降では、災害公営住宅への入居が進むことから、その世帯を対象とすることが考えられる。さらに、防災集団移転促進事業、土地区画整理事業などに関連して住宅再建を達成する世帯が現れるとみられ、そうした世帯をも調査対象に加えていくことを検討する。調査票の項目については、継続して設問する項目に加え、時間の経過にともなって現れる新たな問題状況を意識し、調査年度ごとに独自の項目を設けることを検討している。 本研究では、被災者アンケートに加え、自治体訪問による住宅施策の調査を進めてきた。これを継続し、今年度および来年度においても、自治体訪問を繰り返し、住宅復興の政策・制度に関する実態把握と評価分析を継続したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の調査が仮設住宅と「みなし仮設住宅」を対象としたものであったのに対し、今年度は、これらに災害公営住宅が加わることから、費用がより大きくなると予想された。また、調査データがしだいに蓄積されることから、その分析のための会合の頻度を増やす必要があると考えている。これらの点から、今年度の研究では、会合回数を少し減らすなどして、繰越金を残すこととした。 上記のように、被災者を対象としたアンケート調査が、次年度では、仮設住宅と「みなし仮設住宅」に加え、災害公営住宅をも対象とすることから、その実施のための費用として使用する。また、上記のように、増大する調査データの分析のために、会合を増やす必要があると考えられ、そのための費用として用いる。
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