研究課題/領域番号 |
25289212
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 富山国際大学 |
研究代表者 |
浦山 隆一 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (10460338)
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研究分担者 |
渋谷 鎮明 中部大学, 国際関係学部, 教授 (60252748)
仲間 勇栄 琉球大学, 農学部, 教授 (70142362)
鎌田 誠史 有明工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70512557)
山元 貴継 中部大学, 人文学部, 准教授 (90387639)
齊木 崇人 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90195967)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 琉球 / 近世村落 / 村抱護 / 御嶽 / 景観 / 環境計画 / 集落空間 / 村立て |
研究概要 |
2つの基盤研究B(代表:浦山・鎌田)の総括と課題の整理のため、5月に第1回の研究会(中部大)をおこなった。議題として、平成24年開催した第1回沖縄シンポジュームの講演記録を冊子にする事が決定した。6月に、勝連南風原集落の本調査と八重瀬町安里集落の調査を行った。明治期の集落復元図を手掛りに、村建ての根拠地点を確認した。安里集落では村抱護林残影踏査を行った。 7月~8月にかけて、2つの調査が企画された。①多良間村の御嶽林・集落調査と宮古島市北部調査:仲間は塩川・普天間御嶽の植生分布測量を行った。浦山・山元は仲筋地区の再調査を行った。また宮古島市北部の聖域植生踏査も行った。②波照間島及び竹富町明治期地籍図調査:波照間島では中世村落遺構と集落内のウツヌワー(村内の拝所)を踏査し、竹富町役場では明治期の地籍図写し(859枚)の撮影を行った。 9月には旧具志頭村安里集落と旧玉城村前川集落の本調査が行われた。①安里では一筆調査図に、集落の歴史的空間要素等の情報を記入した。②玉城では「内抱護・外抱護」の二重の抱護林の存在を現地で確認した。 また10月に中国・広東省の梅州市の囲龍屋の空間構成並びに風水林・風水樹の現地調査を行った。嘉応大学客家研究院のシンポジュームに参加し、「客家民居」‘客家囲龍屋’風水樹・風水林を見学した。 第2回研究会は12月に中部大学で開催した。報告発表は①多良間島集落調査②沖縄の御嶽林の植生調査③集落の集落形成過程仮説であった。 2月に宮古島及び沖縄本島の18世紀に創建された村の調査:齊木・鎌田・浦山が宮古島市にて8集落を現地調査した。沖縄本島では北部4集落と南部3集落を調査した。なお仲間らは波照間島のピティヌワー(野の御嶽)の植生調査を行った。3月には韓国・済州島の調査がなされ、城邑民俗村や村の堂の見学を行った。また済州大学で昭和20年の米軍航空写真の閲覧も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年開催の沖縄シンポジューム の講演記録を小冊子にした。『生き続ける琉球の村落―固有文化に見る沖縄の環境観と空間形成技術―』(P1~77;富山国際大学現代社会学部、2013.10.15)を発行・沖縄の公立図書館等に配布した。講演記録をまとめる過程で、今後の課題が明らかになった。 それに基づき、6月、うるま市勝連南風原集落の本調査がなされた。明治期の集落復元図を手掛りに、村建ての際の計画根拠地点を確認した。その結果は「沖縄本島・旧勝連間切の近・現代における村落空間の特徴と変遷―村落空間構成の復元を通じて その2―」(『日本建築学会計画系論文集』2014.6)として投稿・採用された。 山元は一連の多良間島集落の地籍図や土地台帳の分析から2編の研究発表を,情報知識学会(第21回年次大会)と日本地理学会秋季学術大会(2013.6)で行った。さらに9月に行われた旧具志頭村安里集落と旧玉城村前川集落の本調査によって、次なる研究発表もなされた。「沖縄本島南部における 「格子状集落」の形成 -南城市玉城・前川集落などを事例に-」(日本地理学会春季学術大会、国士舘大学:2014.3) また、仲間は多良間島や波照間島の御嶽林植生調査から「沖縄の御嶽林をどうとらえるか:植生・歴史・文化の視点から」の新しい視点で研究を深化させつつある。一方、中国・嘉応大学客家研究院のシンポジュームに参加し、陳と河合が研究発表をした。さらにソウル大学で澁谷・陳が招待講演を行った。その他、調査成果として、宮古島の18世紀に村落移動・創建された村々の調査の結果、集落の集水域圏を村域単位とする島立て原理仮説も構築可能となった。なお基礎資料である明治期地籍図調査の収集もなされた。竹富町役場所蔵の明治35年の地籍図写し(859枚)の撮影を行った。また南城市所蔵の明治期地籍資料状況も明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
科研費研究結果の公表として、平成26年10月4日に第2回学際シンポジューム「生き続ける琉球の村落―近世沖縄の村落をめぐる環境観と村立て形成の原理―」(沖縄県立博物館美術館)を企画している。基調講演には沖縄県立博物館美術館長・安里進氏を予定した。安里氏は「(仮)地図世界に見る琉球の村々」、鎌田は「生き続ける琉球の村落」、山元は「‘格子状集落’の成立」、浦山は「場所に刻印された土地の記憶」、仲間は「沖縄の御嶽林の成立と植生構造」、河合はアジア研究との関連で「客家地域における生命観と‘抱護‘の思想」である。 そのため4月に年間スケジュール計画とシンポジューム事業計画の研究会を神戸芸工大で行い、全体調整をする。4月下旬は字誌レベルでの文献調査と沖縄公文書館収蔵の昭和20年撮影「米軍斜め撮り写真」の再確認調査を行う。さらに不足写真資料については済州大学地理学研究室収蔵の同種の資料調査も追加調査する。 5月~7月に掛けては、集落調査を沖縄本島と宮古島で鎌田・浦山が中心となって進める。それと並行して、浦山・仲間は宮古島市狩俣集落のフクギ植生分布調査及び史跡調査のため、準備打合せを自治会及び関係者と重ねて、9月に本調査を行う。山元は宮古島市の法務局で明治期地籍図調査を進める。澁谷は抱護研究で進めてきた知見を活用して『北木山風水記』の内容検討の再構築を行う。 10月以降ではシンポジューム終了後、再度、研究会を11月に中部大で行う。第2回学際シンポジューム冊子の作成作業を進め、次年度への出版の道筋をつける。さらに浦山は宮古島の民俗資料や祭祀資料並びに神歌資料を収集し、御嶽名称や神名の分析を「村立て神事」を通して考察し、その聖域の場所論的性格や計画村落との関連研究を仲間と共に行う。 2月~3月には海外関連調査として台湾客家集落(台中市近郊)の巡検を長野氏(神戸芸工大)の案内で行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画以上に研究成果が上がったので、平成27年度に予定していた一般者を対象とする沖縄における第2回学際シンポジューム企画を前倒し、平成16年度の10月に沖縄県立博物館・美術館で開催する。その後シンポジューム記録を冊子としてする予定である。 また、御嶽植生を宮古島や波照間島等で予備調査した結果、ミクロコスモス単位での細密調査を宮古島市狩俣集落で企画している。このためには総合的把握を行う専門的スタッフへの費用と現地協力者謝金の増額は必要となる。さらに今年度の中国・梅州市での「客家囲龍屋」と「台湾客家集落」との比較調査の必要が、琉球の集落空間を考えるために必要となるので海外調査を企画した。その他調査及び資料収集は研究実施計画に基づいて使用する。 シンポジューム・冊子作成の執行予算としては約124万円である。内訳は開催関係(施設使用料・ポスター&チラシ費・資料費・人件費等)が50万円、議事録・冊子関係(議事録・製本&印刷等)が32万円、準備のための現地スタッフ・作業打合せ関係(7月・8月・9月の旅費等)が42万円。この費用については今年度未使用金額の1,102,833円を充当する。 また、次年度は沖縄の聖域データーのスライド&ネガ写真のデジタル化に30万円及び宮古島狩俣集落聖域調査に、植生分布調査班(4名×1週間)が40万円、集落形成過程遺構調査班(3名×5日間:内地からの交通費込み)が60万円、現地協力者謝金が10万円であり費用が140万円となるため、当初の計画の中でも重点配分する。 さらに台湾客家集落調査に90万円(6名×15万円)の予算配分を行う。その他、3回の研究集会(神戸芸工大1回、中部大2回)を計画している。
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