研究課題
重要文化的景観を選定するためには、選定地の調査と、選定範囲の策定と関係者間の利害調整、報告書の作成が必要である。そのプロセスの中で本研究のテーマとする利害調整プロセスがみえてきた。平成25年度より四国・四万十川流域、熊本南阿蘇、天草諸島、長崎平戸、外海に赴き、地元自治体の担当者(教育委員会であることが多い)から選定までのプロセスをヒアリングした。第一に、調査段階で選定対象地域の文化的、景観的価値をみいだすことがある。それは歴史的事象の発掘と、生業としての文化的活動の実態、景観としての事象であるが、他に秀でているという価値を高めることが必要であり、そのために学識経験者の複数の専門の学知が必要となる。第二に、利害関係者が円卓に着き、文化的景観へのベクトルを共有するか、という点である。最終年度の事例は、都市型の景観、京都・岡崎の文化的景観であったが、学識経験者とともに、関係部局が円卓に座った。その選定地が京都市所有の土地が多いというのも選定にむけて利害調整が庁内で閉じるというメリットがあった。ただし、京都市上下水道局が管轄する琵琶湖疏水とその付属物については疏水が現役の水道施設の水源であることから、水道水源に関わる部分を切り離し、かつ水道局側も文化市民局の求めるレンガのポンプ場をいれるなど、時間をかけた調整が求められる。第三に、文化的景観選定のあと、世界文化遺産への申請をめざすなど、地域の資源を顕彰する共通目標をもつことで利害関係者が同一方向を向くということもあった。何よりも選定に向けた担当者や委員長の熱意・努力が求められる。いくつかの事例研究で明らかとなったのは、システマティックには事ははこべず、時間をかけた立場の異なる関係者の理解という要点であった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。