研究課題/領域番号 |
25289217
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
梅津 理恵 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60422086)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電子・磁気物性 / 構造相変態 / 巨大磁気抵抗効果 / 電子状態 / 磁気モーメント |
研究実績の概要 |
非化学量論組成Ni基ホイスラー合金は磁場印加に伴い常磁性マルテンサイト相から母相強磁性相へ構造相変態を起こす。その際に、単に磁化が大きく変化するだけでなく、巨大磁気抵抗効果や巨大磁気熱量効果も示し、このようなドラスティックな物性変化は電子状態の変化に起因すると考えられている。本研究では、Ni基ホイスラー合金の電子輸送特性、および比熱測定を系統的に行うことにより理論計算からのアプローチが困難なマルテンサイト相の電子状態を調べ、磁場誘起構造相変態に伴う巨大磁気抵抗効果の起源解明を目的としている。 初年度となる平成25年度は、Ni-Mn-InおよびNi-Mn-Sn合金について、広い組成範囲で試料を作製し、X線回折測定や磁化測定で相状態を確認した後、低温比熱測定を行った。このデータを解析することで電子比熱係数やデバイ温度が得られ、特に電子比熱係数の組成変化の様子から、マルテンサイト相と母相における電子状態密度の変化を推測することができる。Ni-Mn-Snにおいて系統的に比熱測定を行ったところ、マルテンサイト相における電比熱係数は組成変化が小さく、比較的小さな電子比熱係数を維持していることが分かった。一方、母相の電子比熱係数は磁場誘起構造相変態を示す組成に向かうにつれて値が大きくなり、構造相変態時に大きな電子状態変化を示すことを示唆する結果が得られた。一方、Ni-Mn-In系では、マルテンサイト相における電子比熱係数はNi-Mn-Sn系合金と同程度であるのに対し、母相の値は大きく異なっており、二つの合金系において母相の電子状態が異なることが推定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度はNi-Mn-Z(Z = In, Sn, Sb)系合金の比熱と電子輸送特性を測定することを計画していたが、試料作製に準備を要したため、輸送特性の測定はまだ取り掛かっていない。しかしながら、Ni-Mn-InとNi-Mn-Sn系合金に関しては、試料作製・磁化測定、ならびに比熱測定を終えている。Ni-Mn-Sb系合金試料の作製はこれから行う。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に作製した多結晶試料を用い、Ni基ホイスラー合金の低温での電子輸送特性(電気抵抗・ホール係数・熱伝導度等)を測定することを計画している。また、H25年度の直接経費にて単結晶育成装置を導入し、試料の作製にとりかかる予定である。さらに、Ni-Mn-Sbについては多結晶試料を用いて低温比熱測定を行うことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
メスバウワー分光実験の結果を解析したところ、組成変化の様子が非常に複雑であり、追加実験を行わなければ磁性形状記憶合金の構造相変態の起源に関わる、詳細な磁気状態を解明できないことが判明した。そのため、さらに、Ni-Mn-In(Ga)系合金や単結晶試料も研究対象に加え、Ni-Mn-Sn多結晶試料と比較検討を行い、多角的に研究を行う必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
単結晶育成の必要性が生じたため、翌年度分の請求額と合わせることで単結晶育成装置を購入して試料作製を行い、電子状態解明のための詳細な物性測定を行うことを計画している。
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