Siは、毒性が低い、p型・n型の制御が容易、低価格で高品質な材料が入手可能といった多くの利点を有する一方で、バルクSiのZTは最大でも0.2程度しかなく、実用化の目安であるZT = 1には遠く及ばない。この原因は、軽元素・単純結晶構造・共有結合に起因する高い格子熱伝導率と高ドープ領域におけるイオン化不純物散乱に起因する低いキャリア移動度にある。 本研究では、ナノ構造制御と変調ドープを組み合わせた手法により、Siの熱電特性を向上させることを試みた。結果、金属シリサイドをナノスケールでSi中に分散することで、高い出力因子を保ちつつ格子熱伝導率を大幅に低減させ、ZTを向上させることに成功した。
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