研究課題/領域番号 |
25289221
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松村 晶 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60150520)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ材料 / プラズモニクス / レーザー光 / 高分解能電子顕微鏡 / その場観察 |
研究概要 |
棒状の金属ナノロッドはその形状異方性により特徴的な光学特性を有し、様々な光学機能素子としての応用が期待されている。本研究では、パルスレーザー光照射機能を有する超高圧電子顕微鏡(HVEM)を用いた原子レベルの高分解能その場観察・解析を進め、金属ナノロッドのレーザー光照射による励起過程とそれによって引き起こされる動的挙動を支配する因子を明らかにすることを目的としている。 まず、レーザー光強度測定ホルダーを用いてHVEM内の試料位置でのレーザー光強度とその広がりを測定した。その後に、Quantifoil炭素膜をHVEM内に挿入してレーザー光照射を行い、支持膜の破損位置からレーザー光中心位置を決定して電子顕微鏡視野における局所的なレーザー光強度を見積った。 このような準備の後に、長軸50 nm, 短軸10 nmの金ナノロッドの波長λ=1064 nmの近赤外光に対する挙動について研究を進めた。HVEM内でレーザー光を試料に照射して、それぞれのナノロッドの外形と内部構造の変化をパルス照射ごとに観察した。外形については、最初の1パルス照射で球形に近づいてアスペクト比が大きく減少するが、その後の追加照射ではその変化は抑えられることが明らかになった。その原因は、近赤外光の吸収波長がナノロッドのアスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)に依存しており、アスペクト比の減少とともに吸収バンドが短波長側にシフト(ブルーシフト)したためと結論した。ナノロッドの内部構造についてはHVEMでのその場高分解能観察とともに、収差補正高分解能走査透過電子顕微鏡によるSTEM-HAADF像観察によって解析を行った。照射前は単結晶状態であったナノロッドが、1パルスの照射によって完全に内部の原子構造を変化させ、双晶や積層欠陥を伴って再結晶する様子がとらえられた。今後、詳細な原子構造解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HVEM内でのレーザー光照射条件がほぼ確定されており、順調に研究は進んでいる。特に、高分解能電子顕微鏡観察によって、ナノロッド内部の原子構造がわずか1パルスの照射でも全域にわたって完全に変化することが示されたことは、インパクトが大きい新たな知見である。一方、HVEM内試料位置での偏光条件の確定を試みたが、途中経路での乱反射の影響が入っている可能性が示唆された。早急に装置の更なる整備を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ナノロッド内部の原子構造の解析には、超高圧電子顕微鏡でのその場高分解能透過像観察に加えて、収差補正走査透過電子顕微鏡によるSTEM-HAADF法が有効であることが示された。試料の装置への移動など手間はかかるが、その場観察だけでは得られない詳細な原子構造の解析が可能であり、今後はSTEM-HAADF法の活用を進めて行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度予算にほぼ従って研究を遂行しており、次年度使用額は全体からすればわずかである。次年度に使用することによって、より有効な予算活用が行える。 次年度使用額はわずかであり、経常的な研究経費として活用する。
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