研究課題/領域番号 |
25289222
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮崎 讓 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40261606)
|
研究分担者 |
林 慶 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70360625)
高松 智寿 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60708428)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 廃熱利用 / 熱電変換 / チムニーラダー型化合物 / 非整合化合物 / 変調構造 |
研究実績の概要 |
対象とする化合物群は3次元の対称性で結晶構造を記述できないため、第一原理計算による電子構造評価が困難である。そのため、電子状態を半定量的に表現できるVEC(遷移金属1個あたりの価電子数)の概念をもとに合金設計を行い、MnSig の Mn サイトを Cr, V, Mo で僅かに部分置換した試料を合成したところ、無置換試料に対して大幅な熱電特性の向上が認められた。特に Cr および V 置換試料では、2.0 mW/K2m の出力因子を達成した。最大の出力因子を実現する VEC の値は、置換元素に依存せずいずれも 13.90 であることが明らかになった。 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた微細組織観察を行ったところ、出力因子の向上が見られた試料では、原子レベルでの配列の乱れによる格子歪みが均一に分散していることが明らかになった。このような欠陥が、格子熱伝導率の低下を引き起こしていることが実際の熱伝導率測定により明らかになった。以上のことから、Cr や V による微量置換は、熱電特性の向上に有効であることが確認された。このような微細組織を実現するための熱処理条件について詳細に検討したところ、従来行っていたアーク溶解後の試料を、石英管に封入して1000℃で1週間均質化を目指したアニール処理を行わなくても、放電プラズマ焼結法による10分程度の焼結で充分に微細組織が実現可能であることが明らかになり、合成プロセスの単純化という実用上の観点からも、有利であることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p 型試料において、実現しうるほぼ最大の出力因子が達成できたことで、出力密度 1kW/m2 を超える発電モジュールの実現に大きく前進した。一方で n 型試料に対しては、性能は高いものの原料コストも高すぎるため、できる限り貴金属を用いない素子を合成する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる27年度は、これまでの材料探索・組成最適化の結果得られた素子をモジュール化するための検討を行うとともに、モジュールの試作および発電特性評価を行い、高出力密度を有する発電モジュールを創製する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
熱伝導率測定装置の電気炉に不具合が生じて温度制御が不安定になったため、当初予定していたより熱伝導率の測定にの停滞が生じ、消耗品の白金線の使用量がやや少なくなったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
電気炉の修理により温度制御が安定したため、停滞していた熱伝導率測定を集中して行い、併せて当初使用するはずだった白金線を購入し、測定の遅れを取り戻す。
|