研究課題/領域番号 |
25289224
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鶴見 敬章 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70188647)
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研究分担者 |
武田 博明 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00324971)
保科 拓也 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80509399)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 単結晶 / 電気光学効果 / 非鉛材料 |
研究概要 |
本研究者らは、無機強誘電体の電気光学効果を決定する因子に関する最近の研究で、電気効果係数は電歪定数と光弾性定数の積で決まることを突き止めている。そこで本申請研究では、この理論に基づき両者の積の高い候補材料を選択するとともに、それらの単結晶を育成して電気光学特性を測定し、新規電気光学結晶を提案することを目的とする。 本年度は新規結晶を効率良く探索できるよう、微小結晶でも電気光学特性を評価できるシステム(顕微電気光学効果測定システム)の構築を行った。落射・透過型偏光顕微鏡をベースとして、レーザー、プローバー、CCDカメラ、フォトディテクター、微小遮光マスクを設置することで、顕微電気光学効果測定システムを構築した。このシステムは、既存の装置で課題であった(1) 微小結晶のハンドリングの困難さと(2)レーザーの集光限界により測定領域が狭小化できず正確な屈折率変化が求められないという二つの点を解決している。本システムの有効性を調べるため、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)セラミックスを300ミクロンの粒子にまで破砕させて、測定試料として選定し、そのカー定数を求めた。本測定システムでは平面電極を使用しているため、電場解析を行うことで電場分布を考慮し、PLZTセラミックス試料のカー定数を算出した。結果、カー定数の測定値が0.37[fm2/V2]となり、文献値(0.38)とよく一致した。よって、高い精度で光学特性評価ができることが分かり、本システムの有効性が確認された。 本年度ではさらに新規組成であるBaTiO3-BaSnO3系の単結晶育成を帯溶融法にて試み、直径0.5mm、長さ2cm程度の棒状試料を得ている。次年度以降、詳細な電気光学特性を評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、候補材料の単結晶育成、電気光学定数測定システムの構築と測定、誘電・圧電特性の測定の3つの検討項目により構成される。交付申請書に入力した本年度の研究計画は、(1)単結晶の育成、(2)電気光学定数測定システムの構築である。(1)について、新規組成であるBaTiO3-BaSnO3系の単結晶育成を帯溶融法にて試み、直径0.5mm、長さ2cm程度の棒状試料を得た。評価をまだ行っていないため、達成度は80%である。一方、(2)については、上述したように微小結晶でも評価できるシステムを開発した。よって、(2)の達成度は100%である。以上を総合すると、達成度は90%となり、本申請研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、候補材料の単結晶育成、電気光学定数測定システムの構築と測定、誘電・圧電特性の測定の3つの検討項目により構成される。平成25年度には当初の計画通り、測定システムの構築を中心に行なった。本年度以降は同システムを用いて、開発する新結晶の測定に使用する。また、既に新規組成である[1]BaTiO3-BaSnO3系, [2]BaTiO3-Bi(ZnTi)O3系, [3]BaTiO3-Bi(MgTi)O3系, [4] BaTiO3-BiScO3系のうち、[1]について単結晶育成を試みた。平成26年度以降は、[2]~[4]の組成についても単結晶育成を試みる。これら4つの候補材料のうち幾つかは揮発成分を含むため、引き続き帯溶融法を中心に最適な育成方法を用いて結晶を育成し、その結晶を用いて物性評価を行う。平成27年度には微小結晶の精密な誘電率測定を行う。本研究の基礎となる理論では、電気光学定数は屈折率の変化と分極の関係から定義される。どちらも誘電率がカギを握っているため、精密な測定が必要である。さらに、電気光学定数は電歪定数と光弾性係数の積でも表され、どちらも別々に求める必要があり、精密測定ならびに電子密度から計算で求める。得られた成果は取りまとめ学会発表および論文発表を逐次行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の助成金に残額が発生し、26年度に繰越しを行ったのは、本研究で購入した金属顕微鏡システムが当初予定より安く購入できたためである。 平成26年度より本格的に結晶育成を始めるため、使用する試薬の量が増加する。そこでH25年度からの繰越額を試薬の購入に充てる。
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