研究課題/領域番号 |
25289224
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鶴見 敬章 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70188647)
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研究分担者 |
武田 博明 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00324971)
保科 拓也 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80509399)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 単結晶 / 電気光学効果 / 非鉛材料 |
研究実績の概要 |
本研究者らは、無機強誘電体の電気光学効果を決定する因子に関する最近の研究で、電気光学効果係数は電歪定数と光弾性定数の積で決まることを突き止めた。そこで本申請研究では、この理論に基づき両者の積の高い候補材料を選択するとともに、それらの単結晶を育成して電気光学特性を測定し、新規電気光学結晶を提案することを目的とする。 本年度は、候補材料としてチタン酸バリウム(BaTiO3)にBi(Zn,Ti)O3およびBaSnO3を固溶させた組成(BT-BZT、BTS)を選定し、昨年度に構築した顕微電気光学効果測定システム(以下、顕微システム)を用いて同材料の電気光学効果の測定を行なった。BT-BZT組成を90mol%BaTiO3(10mol%Bi(Zn,Ti)O3)、BTS組成を85mol%BaTiO3(15mol%BaSnO3)と設定した。これらを固相法によって作製したところ、相対密度が93~94%である高密度なセラミックス試料が得られた。共に粒径が30 μm程度であり、顕微システムで評価が可能であることがわかった。誘電率測定より、周波数40 HzでBT-BZTはεr= 4600、BTSはεr= 15700であった。顕微システムを用いた電気光学効果測定から、BT-BZTとBTSのカー定数はそれぞれ0.09 fm2/V2と0.10 fm2/V2であった。これらの値は既存の鉛系電気光学結晶であるPLZTの0.38 fm2/V2より小さい。この原因について、BT-BZTやBTSは電子密度が高く光弾性定数が大きくなるものの、電歪定数が通説と異なりペロブスカイト型結晶で一定ではないことによると考えている。ここで、BT-BZTはBTSに比べ誘電率が1/3倍であるにも関わらず、BTSと同程度のカー定数を示していることに着目した。この結果はカー定数を左右する因子として電歪定数が重要であり、変位型強誘電体をリラクサー化させることで大きい電歪を示すことを示唆している。今後も引き続きBiを含むBaTiO3固溶体系で材料探索を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、候補材料の単結晶育成、電気光学定数測定システムの構築と測定、誘電・圧電特性の測定の3つの検討項目により構成される。交付申請書に入力した本年度の研究計画は、新規組成の物性評価である。平成26~27年度に2年間、[1]BaTiO3-BaSnO3系, [2]BaTiO3-Bi(ZnTi)O3系, [3]BaTiO3-Bi(MgTi)O3系, [4] BaTiO3-BiScO3系について評価する計画であり、平成26年度は[1]と[2]の物性評価を行い、上欄で述べた今後の新規結晶探索の指針を得ており、達成度は90%以上と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、候補材料の単結晶育成、電気光学定数測定システムの構築と測定、誘電・圧電特性の測定の3つの検討項目により構成される。平成25年度には当初の計画通り、測定システムの構築を行なった。平成26年度ではBaTiO3-BaSnO3系, BaTiO3-Bi(ZnTi)O3系の電気光学効果について評価した。 平成27年度には平成25,26年度にて見出した有望な新しい電気光学結晶の単結晶化を行う。つづいて育成した微小結晶の精密な誘電率測定を行う。本研究の基礎となる理論では、電気光学定数gは屈折率の変化(1/Δn2)と分極Pの関係から定義される。これに対し、セナルモン法で測定される電気光学定数は、屈折率変化(1/Δn2)を電界Eで展開したときの1次(ポッケルス定数)および2次(カー定数)の係数として定義される。したがって、測定値を理論式と比較・検証するためには、電界Eから分極Pへの移行が必要となる。分極Pと電界Eは物質の誘電率εと真空の誘電率ε0を用いてP = (ε- ε0)Eと表される。本研究で誘電率測定が必要な理由はここにある。また、電気光学定数gは電歪定数Qと光弾性係数ρの積であるため、厳密には、Qとρも別途測定する必要がある。しかしながら、微小結晶を用いた光弾性係数の測定は現時点では非常に困難なため、本研究では電歪定数Qを測定し、光弾性定数ρは結晶の電子密度から計算で求める。また、理論と異なる実験結果が出た場合には、適宜、実験と計算結果の整合性がとれるよう理論式を修正する。この修正した理論式からシミュレーションを行うことで新規材料探索のベースとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた第33回エレクトロセラミックスセミナー参加を取りやめたため、その参加費分の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
結晶育成もしくはセラミックス合成に使用する試薬の量が増加するため、その試薬購入に当該使用額を充てる。
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