研究課題/領域番号 |
25289225
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松永 克志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20334310)
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研究分担者 |
中村 篤智 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20419675)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電子状態計算 / 偏析元素 / 表面準位 / アパタイト / 点欠陥 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、骨形成の場であるアパタイト表面を修飾する添加イオンの電子状態を、第一原理解析と検証実験により解明することである。具体的には、第一原理計算に基づく申請者オリジナルの解析手法を駆使し、アパタイト表面を修飾した添加イオンの電子・原子構造と熱力学的安定性を理論解析する。次に、モデル試料合成とその実験解析から、理論計算結果の検証を行い、表面修飾イオンの電子構造を解明する。これらの結果を基に、骨形成過程における添加イオンの役割を電子論的観点から明らかにする。 本年度は、前年度に合成した表面修飾した試料について、粒子形状の評価や表面修飾イオンの電子状態評価を行った。同時に、第一原理計算でアパタイト中に固溶させたMg2+やZn2+イオンの計算を行い、EELS理論スペクトルの計算も行った。その結果、実験スペクトルはMg2+は酸素が6配位、Zn2+は4配位した局所状態を反映したものであることがわかった。 一方、計算解析では、水溶液溶媒効果を考慮するためCOSMO法を用いた電子状態計算についても検討した。バルクでの置換固溶も計算し、表面の場合と比較検討したところ、表面での置換固溶エネルギーがMg2+およびZn2+ともバルクより低くなることがわかった。つまりこれらは表面偏析する傾向にあるといえる。また、Zn2+は表面で共有結合的な電子状態を形成することがわかった。さらに、界面での水分子の吸着の影響についても検討した。HAP表面に水分子を吸着させたモデルを構築し、構造最適化を行ったところ、既往報告のX線構造解析結果とよく対応した吸着水分子構造を得ることができた。これを用いたイオン偏析を検討することで、水分子の存在下での陽イオン偏析をより詳細に解析できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
溶媒効果の計算は、計算モデルの構造構築にもう少し検討が必要であるが、おおむね順調に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
溶媒効果の計算は、水分子を含む計算モデルの構造構築にもう少し検討が必要であるが、計算可能であることが平成26年度研究でおおよそ確かめられているので、平成27年度にこれを継続させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の実験消耗品費が予想より安価で済んだことと、計算解析に予想より時間がかかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
主として、最終年度も継続して行う実験・計算解析のための消耗品費として使用予定。
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