研究課題/領域番号 |
25289226
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
河本 邦仁 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30133094)
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研究分担者 |
万 春磊 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10641441)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱電変換材料 / 超格子 |
研究概要 |
本年度は、ボトムアップ法によって3次元超格子SrTiO3セラミックスを構築するため、La-STOナノキューブを液相析出法で合成し、これらを自己集合させて3D超格子を構築するためのプロセス開発を行った。Capping agentを用いて10-20nmサイズのSTOナノキューブの水熱合成に成功、~15nmサイズのLaドープSTOナノキューブの水熱合成にも成功した。さらに、LaドープSrTiO3ナノキューブを有機溶媒中に分散し、UV照射下で溶媒蒸発させながらシリコン基板上にナノキューブを自己組織的に集積して粒子膜を形成し、1000℃、還元雰囲気中で焼結した。得られた粒子膜は、室温でZT~0.2を示すことを見出した。この値は同組成の単結晶のZT=0.08を大幅に上回るもので、単に粒径を10~15 nmにしただけでも粒界フォノン散乱による熱伝導率が低減して高性能化できることが分かった。 (SnS)1.2(TiS2)2のZTはin-plane方向でTiS2を上回るZT=0.37@700Kを示すが、インターカラントはTiS2層へ電子供給するために、TiS2よりキャリア濃度が高くなる。このキャリア濃度は、出力因子の最大値を与える値よりも高すぎ、電子熱伝導率増加に寄与するため高ZT化の妨げになる。本年度はキャリア濃度を減少して出力因子を上げるため、各種元素ドーピングを試みた。対象物質は格子熱伝導率が最も低い(BiS)1.2(TiS2)2とし、3価のBiサイトへCa, Srを固溶、または4価のTiサイトへ3d遷移金属を固溶した場合の熱電挙動を調べた結果、CrをTiサイトに置換した場合にのみ高ZT化することを発見した。これは、Crの近傍にあるTiの3d軌道が共鳴状態をつくって伝導帯内に位置するフェルミ準位付近の状態密度を押し上げ、熱起電力を増加させる効果が最も効いているためと判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度の当初研究目標はほぼ予定通り達成されたが、いくつかの新たな課題も発生してきていて次年度の研究展開に弾みをつけた。
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今後の研究の推進方策 |
3次元超格子セラミックスと無機/有機ハイブリッド超格子の化学創製を目的とするのは変わらないが、アプローチの仕方を少し違った視点から行うことで新たな展開を図りたいと思っている。3次元超格子セラミックスでは、異なる2種類のナノキューブを3次元に交互配列させた新型超格子の構築を試みたい。また、無機/有機超格子では、磁性イオンの導入や有機分子の誘電性を利用した遮蔽効果の適用などにより、電子物性の改善に取り組みたい。ただし、研究計画の大幅な変更を伴うことなく、これまでの延長線上で新展開を図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入を計画していた蛍光X線分析装置(200万円)は、学内施設を使用することが可能になったため購入を見送った。それに伴って消耗品費の支出も若干抑えられたため、約42万円の節約につながった。 H25年度の研究推進において、ナノキューブの自己集合による3次元超格子構造の構築を目指したが、このために用いる既設のディップコーティング装置の性能が低いため、完璧な超格子構造を形成することができなかった。そこで、H26年度に本繰越金で高性能(ナノスピード)ディップコーターを購入して、完全な3次元超格子の構築にチャレンジする予定である。
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