本研究は、未解明かつこれまで積極利用されなかった斜方晶系由来の60oドメイン構造をニオブ系無鉛圧電セラミックスの分極性能向上に活かすことを目的としている。昨年度はセラミックス試料面に渡るドメイン壁と電場印加方向とのなす角度について統計分布を調べることを可能とし、セラミックス粒子内のドメイン壁の評価に顕微ラマン散乱分光法が応用できることを見出した。 そこでH27年度は、各種実験条件を精密制御し、均一微細組織となる高密度焼結体の合成条件を決定することに取り組み、そのドメイン構造を評価した。特に、二段階焼結法と低酸素分圧焼成法を最適に組み合わせることによって、微構造を均質化した各種ニオブ系無鉛圧電セラミックスの合成が可能であることを新たに見出し、その平均粒子径と電気特性に強い相関があること、さらに粒子サイズ効果を明確に認めるに至った。 すなわち、温度負荷もかけた高負荷耐圧試験を実施した結果、従前製法のニオブ系無鉛圧電セラミックスの共振点はハード系PZTと同じく温度上昇につれて低周波側にシフトし、材料が軟化し、最終的にマイクロクラック形成が観察されたものの、平均粒子系を1/3に減じた改良型セラミックスはクラック形成に対して強い材料構造であると同時に高負荷耐性に優れており、斜方相-正方晶間の相転移温度近傍では電気的疲労現象を示さず、抗電界値Ecもほとんど変化しないことを見出した。その結果、斜方相特有の60oドメイン構造が高負荷耐性に及ぼす影響について新たな知見を得たため、得られた結果を取りまとめ、成果発表を行った。
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